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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
1935/2601

千九百三十五 玲緒奈編 「パパが思うように」

十月十四日。木曜日。




ニュースでまた、子供が虐待で亡くなったという事件が報道されてた。殴ったり蹴ったり、煙草の火を押し付けたり。沙奈子の時と同じ。ただ、沙奈子は何とか生き延びたけど、今回の子は……


これも結局、『躾のつもりだった』とか言うんだろうか?。そんなの、これまでだって何度も何度も何度も言い訳として言われてきたことだよね?。三歳とか、何がどうなったってまず負けるはずのない相手に、自分より間違いなく弱い相手に、どうしてそんなことができるの?。


『ガキなんて言って分からないんだから殴ればいい』とか言ってる人が、結局、こういうことをしてるんじゃないの?。


僕は、沙奈子に対してもそうだし、玲緒奈れおなに対しても殴ろうとか思わないよ。もし咄嗟に手が出てしまうことが今後あったとしても、僕はそれを正当化しようとは思わない。


玲緒奈はまだ、仕事を邪魔してきた時に僕が「やめて~!」と言ってもそれが理解できないどころか余計に面白がってやってくる。困るのは確かだけど、だからって僕は叩いてそれをやめさせようとは思わない。だって、まず間違いなく、『仕事の邪魔をしたから叩かれた』っていうことを理解する前に、


『なんか気に入らないことがあったら相手を叩いていい』


ってことを肯定することになると実感したから。こうやって実際に玲緒奈と接していると、その実感しかない。


何しろ今、玲緒奈はまさに、


『気に入らないことがあれば相手を叩く。物に八つ当たりする』


ということをやってる真っ最中なんだ。まだ赤ん坊だから、自分の感情を巧くコントロールすることができない。だから気に入らないことがあったら叩いてくるし、おもちゃを投げつけたりもする。


そう考えると、『気に入らないから暴力をふるう』なんて、赤ん坊と同じだよね?。大人なのに赤ん坊と同じことしかできないって言うの?。


だけど僕は、仮にも大人と言われる年齢なんだから、赤ん坊と同じでいいとは思わない。ただ僕が気に入らないっていうだけで玲緒奈を叩けば、それは間違いなく、玲緒奈に、『なんか気に入らないことがあったら相手を叩いていい』っていうのが正しいと学ばせることになると実感してる。


玲緒奈が自分のやってることの意味を理解するには、まだ時間が掛かる。だったら、僕はそれまで付き合うだけだ。


だから、


「特に邪魔をされたら困る場合には、玲緒奈が寝てる間に仕事をしようと思う」


と、玲緒奈に離乳食をあげながら絵里奈に話した。


「はい。分かりました。パパが思うようにすればいいと思います」


そんな風に僕と絵里奈が話をしている間も、玲緒奈はもりもりと離乳食の『細切れうどん』を食べていたのだった。



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