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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
1931/2601

千九百三十一 玲緒奈編 「だからごっつんしたら」

十月十日。日曜日。晴れ。




今日も、沙奈子たちは三階で過ごしつつ、ビデオ通話は繋ぎっぱなしにしてる。それで、沙奈子たちの普段の、『大人の前で使う繕われた言葉』じゃなく、素直な本音の言葉を聞くんだ。『大人や親にとって都合のいい言葉』じゃない、今の沙奈子や千早ちはやちゃんや大希ひろきくんや結人ゆうとくんの正直な気持ちを知るんだよ。


だから、『そんな言い方するな』とは言わない。『他所の誰か』に対して暴言を吐いたり乱暴な振る舞いをしたりというのはさせられないけど、僕たちに対して本音を打ち明ける分には、『言うな』とは言わないんだ。


今の時点で玲緒奈れおなに好きにさせてるのも、これなんだ。僕たちの前では好きにやってくれていい。傍若無人に振る舞ってくれていい。暴言でも暴力でも好きにすればいいんだ。だって、赤ん坊だからね。赤ん坊の全力でシャレにならない怪我をする場合があるとすれば、目に当たったりした場合くらいだと思う。だからそれについては用心をするけど、怪我をする心配がない程度のことは、別にいい。


こうやって、僕たちの前では『いい子』を演じる必要がないと学んでもらうんだよ。ただしその代わりに、他所の子に対してそんなことをしようとするのは許さない。他所の子にそんなことをしようとした時には、間に入って体を張って止める。その時も、玲緒奈を叩いたりはしないようにと、絵里奈や玲那や沙奈子とも話し合ってる。


叩かなくても『痛み』を知ることはできる。玲緒奈も、おもちゃを壁に向かって投げつけたらそれが跳ね返ってきて自分に当たって泣いてしまったりしたことも何度もあった。だから、『何かが強くぶつかれば痛い』ことも最近は分かってきてるみたいなんだ。だったら、普通の想像力があれば、強く叩いたりしたら痛いことくらいは想像できるよね?。それを想像できないことが問題であって、『叩かないと痛みを教えられない』わけじゃないはずなんだよ。むしろ、『叩かないと痛みを教えられない』としか考えられないことの方が僕は怖い。何かが強くぶつかれば痛いのは幼児にだって理解できる。


僕は、玲緒奈が、言葉が分かるようになってくれば、


『ごっつんてなったら玲緒奈も痛いよね?。だからごっつんしたら相手も痛いよね?』


と諭そうと思ってる。そして、玲緒奈が僕を叩いたら、『痛いよ』って諭そうと思ってる。一回や二回じゃもちろん分かってくれないと思うけど、十回でも二十回でも、百回でも二百回でも、理解してくれるまで何度でも諭す。その『努力』を貫く。その程度の努力もしなくて、子供に対して努力を口にできるとは思わないんだ。



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