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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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千九百三十 玲緒奈編 「すごく乱暴な遊び方のような」

十月九日。土曜日。曇り。




今日もまた、沙奈子たちは家にいる。まだドレスのデザイン案には余裕があるから。


だからもちろん、三階にいる沙奈子たちと話ができるように、ビデオ通話は繋いでる。ただ、トンネルの位置を変えたことで玲緒奈れおながテレビに触れなくなったんだけど、それでも、今の玲緒奈にはまだあまり聞かせたくない話や見せたくない姿とかはあるし、敢えてテレビの方には映さず、音声だけを繋いである。


その一方で、つかまり立ちができるようになったことで、テーブルの上が見えるようになって、玲緒奈は僕や絵里奈のパソコンに触りたがった。と言うか、マウスかな。僕がマウスを操作してると、


「寄越せ!」


って感じで、


「ぼあっ!」


と手を伸ばしてきたんだ。そこで僕は、素直にマウスを渡す。もっとも、パソコンには繋がってない、壊れたマウスだけどね。でも、玲緒奈は、カチカチという音や感触が気になるのか、マウスを持って床に座り込んで、熱心にカチカチカチカチと押し続けた。それかと思うとマウスホイールに気付いたらしくて、それをぐりぐりと回し始める。


なんか、すごい集中してるんだ。左右のスイッチをカチカチカチカチ、マウスホイールをクリクリクリクリ。まるで研究者みたいにじっと見つめて触り続ける。


とは言え、十分くらいすると飽きてきたのか今度は床にガンガンと叩きつけ始めて。もっとも、床にはクッション材を敷き詰めてるからそんなに衝撃もないし音もしない。ボスボスボスボスいうだけだ。


どうせもう壊れてるマウスだし電池も抜いてあるから別にいい。すると今度は、


「ぶっ!」


って声を上げながらマウスを放り投げて。そして床を転がったマウスまでハイハイで移動。拾い上げたマウスをまた、


「ぶっ!」


と言いながら投げつける。すごく乱暴な遊び方のような気はするものの、今はまだ敢えて好きにさせる。山仁やまひとさんが言ってたんだ。


「イチコも大希も二歳くらいまではすごく『やんちゃ』でしたよ。もう、『傍若無人』と言ってもいいくらいに暴れ回ってました。だから、段ボールで仕切った中の、イチコや大希の手の届くところには、乱暴に扱っても壊れにくい赤ちゃん用のおもちゃや、壊れても構わないものだけを置くようにしてました。もちろん、壊れそうなものは、私がいる時にしか触らせませんでしたが。そうやって一通り暴れると、だんだんと加減を覚えてくるんです。赤ちゃん用のおもちゃでも乱暴に振り回しててそれが自分の体に当たると『痛い』ことが分かるんでしょうね。『ぶつかる』=『痛い』というのを学んでいくようなんです。だから敢えて好きにさせていました」


それが常に当てはまるかどうかは分からないけど、とにかく、今は玲緒奈の好きにさせるようにしたんだ。



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