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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
1927/2601

千九百二十七 玲緒奈編 「伝い歩き記念日」

十月六日。水曜日。晴れ。




昨日更新されたHPの中では、亀山社中や出島、眼鏡橋、中華街、グラバー園、オランダ坂、上海銀行、大浦天主堂、孔子廟といったところを巡ってる生徒たちの姿が写った写真がいくつもいくつもアップされてた。だけど残念ながら、そこには沙奈子たちの姿は写ってなかった。『もしかしたら?』というのはあったけど、はっきりとは断定できなかったんだ。でも、別に連絡は来てないから無事なんだろうなとは思った。


「沙奈子ちゃんがこうやって修学旅行を楽しめるようになったのが、本当に良かったです……」


絵里奈が、ちょっと目を潤ませながらそんなことを。だから僕も、


「そうだね……。これも千早ちはやちゃんや大希ひろきくんや結人ゆうとくんのおかげだと思う。僕たちだけの力じゃないよ。千早ちゃんたちとの出逢いがあればこそのものだと思う。感謝感謝だ……」


素直な気持ちを口にした。


そうだ。僕ももちろん努力したつもりだし、絵里奈や玲那も頑張ってくれた。けれど決してそれだけじゃない。千早ちゃんや大希くんや結人くん、山仁やまひとさんやイチコさんや波多野さんや田上たのうえさんや鷲崎わしざきさんの力があってこそのものなんだよ。そういうのを僕は忘れたくない。


玲緒奈れおながお昼寝を終えてからは、僕も絵里奈も、玲緒奈と仕事に集中する。十月に入ってから『SANA』の仕事に復帰した絵里奈だけど、多くは、星谷ひかりたにさんとの様々な情報共有や今後の営業方針の確認とかの仕事で、結局、パソコンと向かい合ってる時間が多くて、リビングで仕事してることがほとんどだった。


座卓に向かい合って座ってそれぞれパソコンで仕事してる僕と絵里奈の周りを玲緒奈はハイハイで進撃し、そしてウォール・リビングの壁を使って立ち上がり、


「うおーっ!」


と雄叫びをあげたりしてた。と、今度は、僕の傍に寄ってきて、僕の服を掴んでそれで自分の体を支えて、立ち上がったんだ。


「お~、来たのかあ、玲緒奈ぁ♡」


僕が緩み切った笑顔でそう声を掛けると、


「ぶあっ!」


って声を上げて、僕の腕につかまって、移動を。


「え?」


「あ!」


僕と絵里奈は同時に声が出て、


「伝い歩きだ!」


と。そう。間違いなく玲緒奈は、僕の腕を伝って歩いて、座卓につかまって、


「ぶーあ!。ぶあっ!!。あぶるるるる!!」


座卓をバンバンと叩きながら何かアピールしてた。


「パパとママだけで何してんだ!?。私にも見せろ!!」


なんか、そんな風に言ってる気がした。


なにしろ、僕のパソコンの画面と僕の顔を交互に見ながらだったからね。


こうして昨日は、玲緒奈の『伝い歩き記念日』になったんだ。



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