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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
1925/2601

千九百二十五 玲緒奈編 「あいつらもやってるじゃん!」

十月四日。月曜日。




今日から沙奈子たちは修学旅行。朝の六時十五分には学校に集合。六時三十分には出発だそうだ。だから五時に起きて、最終確認して、六時前には家を出る。


『新型コロナウイルス感染症』の影響で秋に延期された上に実際に行けるかどうかも危ぶまれた修学旅行だけど、でも、幸か不幸か、行くことはできた。


「私は別に行けなくてもよかったんだけど……」


多くの人と集団行動するとか、知らない場所に行くとか、何より乗り物に長時間乗ることが苦手な沙奈子は、素直にそう口にしてくれる。それに対して、


『そんなこと言うな!』


とは、僕たちは言わない。『私は別に行けなくてもよかったんだけど……』という沙奈子の気持ちを受け止めた上で、


「本当に無理ならやめてもいいよ」


と前もって言っておいた上で、


「でも、千早ちはややヒロや結人ゆうとが一緒なら行ってもいい……」


っていう沙奈子の決断を僕たちは尊重する。『千早ちゃんや大希くんや結人くんと一緒なら苦手な旅行も行ってもいい』と思える相手がいるっていうのは、本当にありがたいことだと思う。そんな友達に出逢えたことが幸せだと思う。たった三人かもしれないけど、三人いれば十分だとも思うんだ。友達っていうのは、数を競うものじゃないと僕は思う。


これについて玲那は、


「世の中にはさ、『友達なんて一人いれば十分』とか言う人に対して、『陰キャの強がり』とか嘲笑うのもいるんだけど、そうやって他人を嘲笑うことが結局は『生き難い世の中』ってのを作ってるんだって気付いてないんだよね。そういうのってなんだかんだと自分に返ってくるんだよ。そんなことすら理解できないんだ」


苦笑いを浮かべながら言う。


そうだね。他者を嘲笑うこと、蔑むこと、貶すこと、見下すこと、そういうのが蔓延してるから嫌な思いをすることになるのに、自分が率先してそれをしようとしてる人がいるのが本当に情けないと思う。『あいつらもやってるじゃん!』と『他人の所為』にして自分の行いを正当化するんだ。


だけどそれも、身近に、『そんな風にせずにいられない気持ちを受け止めてくれる相手』がいないからそうせずにいられないんだろうなって、千早ちゃんや結人くんや波多野さんや田上たのうえさんを見てると実感する。だけど今は、千早ちゃんも結人くんも波多野さんも田上さんも、そして玲那も、『素直な気持ちを受け止めてくれる相手』が傍にいるから、他所の人に対して、嘲笑ったり、蔑んだり、貶したり、見下したりせずに済んでるんだって実感するんだ。


つくづく、


『言いたいことが言えない世の中は生き辛い』


じゃなくて、


『言いたいことを受け止めてくれる相手がいない世の中は生き辛い』


だと本当に思う。



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