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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
1922/2601

千九百二十二 玲緒奈編 「努力を続けたいんだ」

十月一日。金曜日。晴れ。




絵里奈も今日から『SANA』に復帰だ。もっとも、ここまでも育児休業と言いながらも星谷ひかりたにさんとビデオ通話で会議してたりだったから、そんなに変わらない感じだったけどね。




ところで、『言いたいことが言えない世の中は生き辛い』じゃなくて、『言いたいことが素直に口にできる相手がいないのは生き辛い』というのが、僕の実感だった。


特に玲那は、迂闊に本音をネットとかで発信して、そして自分が、


『実の母親の葬式中に実の父親を包丁で刺し殺そうとした女』


だということがバレでもしたら、それこそもう世間からは『絶好の攻撃対象』になるだろうな。だけど、『言いたいことが言えない』ってのは辛いんだよね?。それは玲那も同じだよ?。だからこそ彼女の素直な気持ちを吐き出してもらって、僕たちがそれを受け止める。そうすることによってストレスが溜まり過ぎないようにするんだ。


その『努力』を、僕たちは、自分が生きてる限り続ける。玲那は大切な家族だから。彼女の心を受け止める努力を、僕は、『面倒臭い』とか言って放棄したくない。


だいたい、僕たちが『社会のお荷物だと見做されない』という世帯年収一千万円を実現できていないのは、親である僕と絵里奈の『努力不足』だよね?。『努力すればどんなことでも実現できるし乗り越えていける』って言うんなら、『世帯年収一千万円』を実現できていない僕たちは努力が足りないってことだよね?。その『努力が足りない僕たち』が、沙奈子や玲緒奈れおなに対して、


『努力すればどんなことでも実現できるし乗り越えていける』


と言って、それは説得力を持つの?。むしろ自分の努力不足を露呈するだけのものとしか思えないけどな。


だから僕は、『努力』って言葉で誰かを責めたいとは思わない。その言葉は、自分を励ますために使うものだと感じる。玲那の気持ちに寄り添うのも、玲緒奈の言葉に耳を傾けるのも、僕が親としてしてる努力で、それをこれからも続けていくために自分自身に対して『努力』と言い続ける。他人は関係ないんだよ。


努力は誰かのためにするもんじゃないってすごく思う。自分自身のためにすることなんだ。『僕の子供たちに幸せになってほしいと考えてる僕自身』のために努力を続けたいんだ。


そんな僕の前で、玲緒奈は今日も、ウォール・リビングの壁を使って何度も立ち上がってた。しかも、立っていられる時間がみるみる長くなっていくのが分かる。『立つということのコツ』を掴みつつあるんだろうな。すごい成長だよ。子供ってこんな風にして成長していくんだな。


沙奈子も、玲那も、千早ちはやちゃんも、結人ゆうとくんも、こんな風にして成長していったはずなんだ。どうしてそれに酷いことができるんだろうな……。



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