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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
1919/2601

千九百十九 玲緒奈編 「お一人で大変ですね」

九月二十八日。火曜日。晴れのち曇り。




今日は、玲緒奈れおなの一歳検診に行った。


「伝い歩きはしますか?」


医師の質問に、「いいえ。まだですね」と答え、さらに、


「パパ、ママなどの簡単な言葉を話しますか?」


という質問にも、


「いいえ。まだです」


と正直に答える。けれど、医師の方もだからと言ってそんなに気にしてる風でもなく、持ってきたガラガラの玩具(おもちゃ)を、


「ふんがっ!。うぶぶ!。ぶいっ!」


みたいに何か掛け声を掛けながら、魔法のステッキでも振るみたいにして一生懸命に遊んでいる玲緒奈の様子を見た上で、


「は~い、玲緒奈ちゃん。こんにちは♡」


笑顔で話し掛けた。すると玲緒奈も医師の方を見て、でも何か訝し気な表情になって、


「ぶるあ!。あっぶ!。ぶぶぶぶぶ!」


ガラガラを振り上げつつ何か答えてた。その様子が、


「なんだお前!。邪魔すんな!。ぶーっ!」


って抗議してるみたいに見えて、つい苦笑い。しかも傍にいた看護師さんが、


「すっごく自己主張してますね。利口な赤ちゃんだなあ」


笑顔でそう言って。すると医師も、


「確かに。はっきりした意味のある言葉じゃなくても、本人的にはしっかりと自分の頭で考えて自分の言葉で伝えようとしてるのが分かります。周りにいる人にもそれぞれ視線を向けて、別の人だって認識してますね。伝い歩きの方も、ハイハイをしっかりとしてるなら大丈夫でしょう。それこそ、今日、家に帰ったら突然始めることだって有り得ます。本人がすごく元気ですし、心配要りませんね。大泉門…頭のこの頭蓋骨の隙間のところも順調に小さくなってますし、問題ありません。とても健康です」


と太鼓判を押してくれた。そして、僕に向かって、


「お母さんの方の体調は問題ありませんか?」


って聞いてきたから、


「はい。いたって健康です。十月からは仕事にも本格復帰します」


と告げた。


「それはよかった。玲緒奈ちゃんを見ていると、とても愛されているのが分かります。これからも大切にしてあげてください」


医師もすごく安心したような表情でそう言ってくれた。だから、言葉のこととか伝い歩きのこととかも心配は要らないんだと素直に思えた。ちょっとくらい他の子より遅かったり、違ってるからってなんだって言うんだ。玲緒奈は玲緒奈だ。僕と絵里奈の子で、僕たちの家族なんだ。他人と何もかも同じじゃないといけない理由なんてない。


その一方で、こうやって父親一人で検診に来ていると、


「お一人で大変ですね。奥さんはご病気か何かで?」


とか聞いてくる人がいる。母親が亡くなったかそれとも離婚でもしたかのシングルファーザーだと思ってるみたいだ。それに対して僕は、


「いえ、仕事で」


と答えてる。それは事実じゃないけど、こういうのも『嘘も方便』ってことだと思う。


他人がどう思っててもどうでもいい。僕たちは僕たちなんだ。



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