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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
1916/2601

千九百十六 玲緒奈編 「こういうのは時間が」

九月二十五日。土曜日。曇り。




今日もまた、玲那の先導で沙奈子たちが自転車で水族館に向かう。あんまり頻繁に出掛けるのは憚られても、沙奈子の場合はただ遊びに行ってるだけじゃないからね。


でも今日は、星谷ひかりたにさんも合流するらしい。ただ、星谷さんは電動アシスト自転車は持ってないから、水族館に直接行ってそこで合流するって。うちから一緒にハイヤーで行ってもよかったんだけど、千早ちはやちゃんが、


「沙奈とヒロが自転車に目覚めちゃったからね♡」


沙奈子のことを優先してくれたんだ。確かに沙奈子も、電動アシスト自転車とは言っても自転車で出掛けることは割と気に入ったみたいで、楽しみにしてたみたいだ。その様子は、僕のところにきてから初めて自転車を買ってあげて、補助輪なしで自転車に乗れるようになった時の様子にも通じるものがある気がする。だったら好きにさせてあげたい。


そうして沙奈子たちを見送った後、僕は絵里奈と一緒に玲緒奈れおなと向き合う。明日で一歳の誕生日を迎える玲緒奈。


「ぼーっ!。ぶあっ!。ばあっ!。ぼぶあっ!」


絵里奈の膝に座って、僕が差し出す『かぼちゃ入りおかゆ』を食べながら、また何か弁舌をぶってる彼女の姿に、表情が緩む。しゃべる度に御飯粒が飛んだりもするけど、今はまだ構わない。掃除すればいいだけだから。今はとにかく、


「うんうん、そうかあ♡」


彼女の言葉に耳を傾けるだけ。『相手の言葉に耳を傾ける姿勢』というものを実際に『手本』として彼女に示すんだ。すると玲緒奈も、僕が話し掛けた時には僕を真っ直ぐ見て黙るんだ。僕の言葉を聞いてくれてるんだと思う。僕の姿勢を真似てくれてるんだって分かる。だけど自分が言いたいことがある時には、


「ぼーぶっ!。あぶあ!」


とか言いながら手を挙げたりする。


「私にしゃべらせろ!!」


って言ってるのかもしれないな。だから僕は、


「うん。なにかな?」


って改めて聞く姿勢を示す。今はまだ身勝手な様子でも、一方的に自分の要求を突き付けてくるだけでも、彼女が満足するまで付き合うし、言葉に耳を傾けるし、その姿勢をしっかりと彼女の前で示してみせる。玲緒奈が今の僕の姿勢を真似るだけで、『相手の言葉に耳を傾ける姿勢』になるようにね。


言葉で『相手の言葉に耳を傾ける姿勢』なんて言われたって、よく分からないよね。


そして、


『相手の言葉に耳を傾ける姿勢を手本として示す努力』


を、僕は続けるんだ。『努力』をね。すぐには理解してもらえないことも分かってる。こういうのは時間が掛かるんだ。それも覚悟の上で、僕は『親』になったんだ。



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