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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
1915/2601

千九百十五 玲緒奈編 「大変な損失だと」

九月二十四日。金曜日。晴れ。




今日は沙奈子が通う学校で体育祭をやってて、僕たちはそれを配信という形で見守ってる。


「沙奈子ちゃーん♡」


沙奈子がちらっと映ると絵里奈が声を上げて、


「ぼああっ!?」


玲緒奈れおなもモニターとして使ってるテレビの画面を見ながら手を挙げて指差した。まさか、沙奈子が映ったことに気付いたのかな。


そして、千早ちはやちゃんも大希ひろきくんも結人ゆうとくんも頑張ってた。


ところで、世の中では、大リーグで活躍してる選手のお母さんもスポーツマンだったことで何か盛り上がっているらしい。


『やっぱり親の遺伝で才能は決まるんだな』って感じの論調も多いみたいだね。だけどその考え方は、『親ガチャ』という言葉に説得力を持たせるものだって気がしてしまう。もし親からの遺伝で才能が決まったのなら、『親ガチャ』というのは実際にあるということだよね?。


それについて絵里奈が言う。


「私も、『遺伝子というものが影響する』ということ自体はあると思います。人種的に身体能力に顕著な差が見られるのがその証拠でしょう。でも同時に、『遺伝子だけで何もかもが決まってしまうわけじゃない』というのも、決して矛盾することじゃないと思うんです。いくら才能があったって、それを伸ばす努力ができる環境がなければ才能の持ち腐れになることもあると思うんです。私と沙奈子ちゃんは遺伝的には繋がりがないけど、沙奈子ちゃんが持ってる才能を伸ばせる環境は作ってあげたいと思ってます」


「うん。僕もそれは思う。沙奈子の父親である僕の兄は、沙奈子の才能を伸ばせる環境を作れるような人じゃなかったのは間違いないと思うんだ。沙奈子があの人の下にいるだけだったら、『SANA』は存在しなかったと思う。そういう意味では、『親の遺伝子だけですべてが決まってしまうわけじゃない』っていう証明にもなってる気がするんだ。親が子供の才能や能力に対して大きな影響を与えるのは事実なのと同時に、それだけで決まるわけじゃないことも事実だと、ちゃんと向き合う必要があると思うんだ。そして僕たちは親だから、沙奈子や玲緒奈れおなが自分の才能を伸ばせる環境を作ってあげたい。それが親としての務めだと僕は思う」


「そうですね。親からの遺伝とか、親が作る家庭環境とか、そういうのが影響を与えるのも事実なら、それだけで決まってしまうわけじゃないのも事実だと、私も実感してます。私の遺伝子を受け継いでないから沙奈子ちゃんの才能とかなんてどうでもいいじゃなくて、私の遺伝子を受け継いでないからこそ、私の遺伝子の影響なんて何も心配せずに、沙奈子ちゃんに自分の才能を磨いてもらえばいいと今は思います。沙奈子ちゃんのドレスを作る才能は、ホントにすごいんです。それを埋もれさせるなんて、大変な損失だと私は思います」


「あはは、そうかもね♡」


人形のドレスの価値は、僕には分からない。だけど、『僕に分からないから価値がない』ってことには決してならない。沙奈子のドレスを求めてくれる人がいるなら、それを生み出せる沙奈子の才能を、僕は伸ばしてあげたいと思うんだ。それを伸ばせる環境を作ってあげたいと思うんだ。



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