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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
1914/2601

千九百十四 玲緒奈編 「死なせなければいいや」

九月二十三日。木曜日。晴れ。




今日は秋分の日。しかも木曜日だから波多野さんも朝からビデオ通話で顔を合わせてる。


沙奈子と千早ちはやちゃんと大希ひろきくんと結人ゆうとくんは、いつものように三階に集まって、勉強をして掃除をして、それからは好きに過ごしてる。外に出掛けるってのが憚られるから、ずっと家にいる。沙奈子はドレス作り。千早ちゃんと大希くんは動画やアニメ鑑賞。結人くんは波多野さんとオンラインゲームをしてるみたいだ。


そうやってみんなが家でおとなしくしてられるのは、家でこうしてるのが心地好いからだと思う。居心地の悪い家なら、きっと嫌だろうな。


『居心地のいい家にする努力』を、僕たちはしてる。だけど僕の両親はそれをしてなかった。兄に対してはそれをしようとしていた様子もないわけじゃなかったけど、少なくとも僕に対してはまったくなかったと思う。あの人たちにとって僕は、家に勝手に住み着いた野良猫みたいなものだったんだろうな。


猫と違って死んでたら面倒なことになるから死なせないようにしてただけで。


その、『死なせないようにしてた努力』に対して、『恩を感じろ』って言うの?。『四の五の言わずに親には恩を返せ』的なことを言う人は。


僕は、沙奈子をここまで育ててきて、そして玲緒奈れおなの親になって、そんな実感はまったくないんだけどな。沙奈子に対しても、最初は確かに、


『死なれたら面倒なことになる』


と思って死なせないようにしなくちゃと思ってただけだった。でも、沙奈子がちゃんと生きた人間だと分かったら、それからは、


『生きた人間として接しなくちゃ』


って思えるようになった。


そうだよ。『死なせたら面倒なことになるから死なせないようにする』なんて、相手のことを何も考えてないよね?。ただ自分が面倒なことになりたくないからやってるだけで、一から十まですべて『自分のため』だよね?。それがなぜ『恩』になるの?。死なせなかったとしてもあくまで自分のためということで完結してるよね?。


最近また、交際相手の連れ子を虐待死させたっていう事件がニュースで流れてた。これは被害者の子が亡くなってしまったけど、亡くなりさえしなかったら、こんなのさえ、恩を感じて感謝しなくちゃいけないの?。


『死ななかった』というだけで?。


そう思える人の感性が僕にはまったく理解できないし、したいとも思わない。沙奈子や玲緒奈に対して、


『死なせなければいいや』


みたいになんてまったく思えない。幸せになってほしいんだ。僕の下にいる間に嫌な思いとか辛い思いとか、なるべくしてほしくないんだ。外でそういうことがあるのは僕にはどうにもできなくても、少なくとも家の中でそんな思いをしてほしくないよ。



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