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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
1911/2601

千九百十一 玲緒奈編 「人間はしぶとく生き残った」

九月二十日。月曜日。曇り。




今日は敬老の日。世間では今週は『シルバーウィーク』ってことらしいけど、なんかあんまり実感がない。


そして今週金曜日、沙奈子たちが通う学校で体育祭がある。だけど、密集を避けるために学年ごとに時間を区切って行う上に、保護者の観戦はなしということになった。代わりに、競技の模様をネット配信するんだって。そのためのアカウントとパスワードが配布されてた。


正直、グラウンドが広くて小さくしか見えないから、もしかするとこっちの方がしっかりと見られるかもしれない。僕たちには逆にありがたい方式だった。


もちろん、グラウンドに行って応援したい人もいるだろうから、そういう人たちにとっては残念だろうし、『今後もこれでいい!』とは言わない。それに沙奈子たちはもう卒業だからね。


十月には、秋に延期されていた修学旅行も、今のところは行われる予定だそうだ。ただしこれもどうなるかはまだ分からない。大丈夫そうな印象はあるけど。


本当に、まさかまさかの年だよね。間違いなく歴史の教科書に載ると思う。むしろ載らない理由がなさそうだ。ペストやスペイン風邪といったものと並ぶ、世界的にも大変な影響があった事態だし。


ただ逆に、ペストやスペイン風邪があった時にも人間はしぶとく生き残ったんだから、きっと今回もそうなんだろうなって気がする。


戦争や大きな災害を経験した人もいるわけだし、結局のところ人間って、生まれてから死ぬまでの間に大きな出来事を目の当たりにしない人なんてむしろ少ないんだろうなって気がした。すでに亡くなってる僕の両親でさえ、阪神淡路大震災を経験してるし、ブラックマンデーのあおりを受けてちょっと大変だった時期もあったらしい。


そういうことなんだろうな。


だから沙奈子や玲緒奈れおなも、今回の『新型コロナウイルス感染症』のような大変な出来事をこれからも何度か目の当たりするかもしれない。そういう時こそ、家族で力を合わせて乗り越えていきたいと思う。その頃には沙奈子も自立してるかもしれなくても、


『自立してたら助け合わなくていい』


じゃなくて、せっかく家族として縁があるんだから、大変な時には力になりたいんだ。沙奈子を僕の子供として受け入れたのは僕の決断だし、玲緒奈に至ってはそれこそ僕と絵里奈の勝手な判断でこの世界に来てもらったんだ。それを、


『もう大人なんだから勝手に生きろ』


というのは違う気がする。人間以外の動物は確かにそうなんだとしても、『人間は人間以外の動物とは違う』って言うんなら、僕は沙奈子や玲緒奈のためなら自分が生きてる間は力になりたいよ。


そんなことを、やっぱりミルクを飲み終えた後に哺乳瓶でガンガン床を叩きながら、


「ぶあっ!。うぶぶるるあ!」


と弁舌をぶってる玲緒奈を見つつ思ったのだった。



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