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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
1908/2601

千九百八 玲緒奈編 「自分の想いを吐き出してた」

九月十七日。金曜日。曇りのち雨。




『親ガチャという事象』だけで何もかもが決まってしまうなんて僕も思わない。沙奈子も玲那も結人ゆうとくんも、今は幸せになれてるからね。


ただ同時に、どういう親の下に生まれるかで有利不利が決まるって事実はあると思う。『子供の人生も努力も滅茶苦茶にする親』というのが存在するのは、厳然たる事実なんだよ。この現実は、少なくとも今の時点では変えようもない。これは、親自身が自覚して自分が『子供の人生も努力も滅茶苦茶にする親にならないように努力する』以外に解決する道はないと思うんだけどな。


そう、努力って言葉が大好きな人たちがいつも口にする『努力』だよ。僕も絵里奈も山仁やまひとさんも、『子供の人生も努力も滅茶苦茶にする親になってしまわないように努力』してるんだ。


僕たちは親として、『努力できる環境』を提供したいと思うんだ。その上で、努力するかどうかそのものは、沙奈子や玲緒奈れおな自身の問題だとは思うけど。


沙奈子の両親は、その環境を作ることを放棄して行方をくらませた。こんな親が『当たり』だなんて、何をどう言い訳したら言えるんだろう。


昨日、バイトが休みだった波多野さんも言ってた。


「なんかさあ、『親ガチャって言葉を擁護するために虐待とかの極端な例を持ち出すな!』とか言ってるのがいるらしいんですけど、それって、『極端な例については考えなくていい』って言ってるのと同じだと思うんですよね。沙奈子ちゃんや玲那さんや結人ゆうとみたいな例はそれこそ『極端な例』ってことになるんじゃないですか?。もしかしたら、うちや千早ちはやみたいなのも『極端な例』ってことにされるかもしれない。だけど、別に私は『裕福な生活をさせろ』って言いたいわけじゃないんですよ。子供が話し掛けてんのに無視して事件が起こるまで放っておくような親が『親としてまとも』なのかどうか?って話をしたいだけなんですよ。


努力するのなんて、そりゃしますよ。私だって大学は行かなかったけど、社長は『いずれ正社員になってもらおうと思ってる』って言ってくれてます。ただそれも、『新型コロナウイルス感染症』の影響でいつになるか分かんなくなったけど……。それでも、チャンスはまだあると思ってます。諦めてません。あんな親だから、こんな状況だから、努力したって無駄だなんて言いたくはないんです。でも、その上で、『あんな親でも親であるだけで感謝しろ』みたいな言い方をされるのは我慢なりません」


って、思いっ切り自分の想いを吐き出してた。波多野さんのご両親は今、彼女のそんな言葉に耳を傾けられる状態にない。だから代わりに、僕たちが耳を傾けるんだ。


そのストレスを、他人を傷付けることで解消せずに済むようにね。



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