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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
1907/2601

千九百七 玲緒奈編 「彼女自身の人生経験」

九月十六日。木曜日。曇り。




『親ガチャ』って言葉について、千早ちはやちゃんも言ってた。


「確かにさあ、うちの学校でももう、『親ガチャに失敗したあ』とか言ってんのがいてさ、『お前まだ中学生じゃん!。まだまともに挑戦もしてないじゃん!。それでなんでもう諦めてんだよ!?。早すぎだろ!?』って思ったりもすんだけどさ。そういうのは『甘ったれんな!』って気にもなるんだけどさ。それでも私は、『親ガチャ』そのものは否定する気になんないんだよね……。


私の実の父親は、パチンコばっかりしててロクに仕事もしない奴だったそうだよ。で、母親はあの調子。そして私のお姉ちゃん二人は、高校すら進学しなくてパン屋の工場でパートとして働いてる。すっごい分かりやすい『底辺』だよね。その中で私だけが高校にも行くことになってさ。その事実だけ見たら『親ガチャなんてない』ってことの証拠になるかもだけど、私はむしろ逆なんだ。『あ~、こういうのを親ガチャって言うんだあ』って実感するんだよ。


だってさあ、ピカえは、『学費は私が出します。貸与型の奨学金を利用するつもりで、仕事を始めてから少しずつ返していただければいい。大学まではみんなと一緒に通えばいいと思います』と言ってくれてるけど、これ、私の努力じゃないんだよねえ。お姉ちゃんたちと私のルートが分岐したのは、私の努力じゃないんだよ。ヒロやピカえと会えたかどうかの違いだけなんだ。それがなかったら、たぶん私も、お姉ちゃんたちと同じ選択をした気がするんだ。だって頑張ろうって気にさせてくれるような態度も言葉もないんだよ?。あの人。


親ガチャ否定したい奴らは、『親からの影響だけで決まると思ってんのか?。お前の周りには親しかいないのか!?』って言ってたりもするんだけどさ、いや、『出逢い』は本人の努力でも才能でもないじゃん?。私がヒロやピカえと出逢ったのなんてただの偶然じゃん。運じゃん。親ガチャを覆すことができるかどうかは運頼みだなんてなったら、それこそ絶望しかないよ。ヒロとピカえに出逢ってなかったら、私、沙奈をイジメ倒してたかもしんないんだよ?。あん時、自分じゃ沙奈にきつく当たるのを止められなかった。それを止めてくれたのがヒロとピカえなんだよ。先生もいろいろ言ってくれたけど、その説教が説得力を持ったのもヒロがいたからなんだよ。ヒロに嫌われるかもって分からせてくれただけなんだ。


そりゃさ、沙奈にきつく当たるきっかけになったのもヒロだったけど、それがなくてもあの頃の私は、何か理由があったら誰かをイジメてたと思う。そして自分じゃそれをやめられなかったんだよ……」


その千早ちはやちゃんの言葉は、彼女自身の人生経験そのものからくる重いものだったと感じたな……。



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