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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
1903/2601

千九百三 玲緒奈編 「想像もつかない成長だと思う」

月十二日。日曜日。曇り。




昨日、玲那の先導で自転車で水族館に向かった沙奈子たちは、ドライブレコーダーを付け、可能な限り歩道が広くて自転車が通れる道か、自動車の通行が少なくて車道を走ってもそんなに危険じゃないルートを辿って水族館に向かってくれた。


その間、信号待ちで止まる度に玲那が状況を伝えてくれるから、家で玲緒奈れおなの相手をしてる僕と絵里奈も安心できた。玲那は、『早く着く』ことじゃなくて、徹底的に『無事に着く』ことを優先してくれたんだ。しかも、玲那、沙奈子、大希ひろきくん、結人ゆうとくん、千早ちはやちゃんという順序で、横には並ばず一列に、スピードは出さずに。


歩行者信号が点滅し始めたらその時点で止まるし、歩行者信号がないところでは信号が黄色になったらそこで止まる。決して突っ切らない。『早く着く』ことより『無事に着く』ことを優先してるから。誰かが信号に引っかかったらそこで待つ。急がない。慌てない。


それに対して、沙奈子はもちろん、千早ちゃんも大希くんも結人くんも文句を言わずに従ってくれたって。玲那の指示に反発する理由がないからね。


『横に並ばないと話できないじゃん!』


みたいなことも言わない。話は、信号待ちの時とかにすればいいし、何か問題が生じた時には一番後ろの千早ちゃんが大声で玲那を呼ぶことに決まってた。千早ちゃんが一番、全体を見ることができて迅速な判断ができるから。彼女が適任だったから。


自分勝手で自分のことしか考えてなかった千早ちゃんはもういない。今の彼女はみんなことを考えて全体を見ることができるんだ。大変な成長だと思う。


そうして、四十五分ほどで無事に水族館に着いた。ハイヤーを使うよりはずっと遅いけど、バスとかだと待ち時間とかも考えるとそんなに変わらなかった。タイミングによってはむしろ早いんじゃないかな。


「着いた~!」


「沙奈、大丈夫?」


「うん、大丈夫……」


「さすがにちょっと遠いね」


「そうか…?」


玲那と千早ちゃんと沙奈子と大希くんと結人くんの声が、小型ヘッドセットに届いてくる。それからは、水族館の中だからもう大丈夫ということで通信は切ったけど、帰りはまた、繋いだままにする。


こうして無事に帰ってきたみんなは、玲那以外は少し疲れた様子だったけど、すごく笑顔だった。


「どう? 自転車は?」


僕が尋ねると、沙奈子は、


「うん。大丈夫だった。怖いこともなかった」


って言ってくれたんだ。こうやって沙奈子の世界がどんどん広がってるのも感じる。僕がついてなくても、みんなと一緒とはいっても、自転車で水族館まで行けるようになってくれた。ホントに、僕のところに来たばかりの頃の沙奈子からは想像もつかない成長だと思う。



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