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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
1902/2601

千九百二 玲緒奈編 「どの国に生まれたって」

九月十一日。土曜日。雨のち曇り。




今日は、結人ゆうとくんも電動アシスト自転車を買ってもらえて初めての土曜日。朝は雨も降ってたけど昼前にはそれも上がったから、


「よ~し!。みんなで自転車で水族館に行こう!」


玲那の提案でそう決まった。星谷ひかりたにさんも忙しくて時間の都合がつかなかったからね。


千早ちはやちゃんにとってはもうすっかり母親代わりになった星谷さんだけど、『仕事が忙しくて滅多に家にも帰れない母親』という状態になってる。でもそれについては、山仁やまひとさんや大希ひろきくんやイチコさんや波多野さんや田上たのうえさんや僕たちがいることで、彼女の不安とか不平不満とか愚痴を受け止めることで、何とかなってる。


玲那も、千早ちゃんにとっては『母親代わりを務めてくれている姉代わり』だからね。波多野さんと玲那が、千早ちゃんにとっては特にお姉さん代わりになってると思う。


だから千早ちゃんも、孤独みたいなものを感じなくて済んでると思うんだ。自分が周りからほったらかしにされてる気がせずに済んでるんだと思う。


『親ガチャ』の話にしても、確かに千早ちゃんにとって両親は決して親としては好ましい人たちじゃない。そして千早ちゃんはまさに現在進行形でそんな親を法律上の保護責任者として持ってるんだ。それを、恵まれた『出逢い』で補ってるだけというのは間違いなくあると思う。そしてそれは、千早ちゃん自身の『努力』によって得たものじゃない。今の関係が維持できてるのは千早ちゃん自身の努力だけど、出逢えたのはそうじゃないんだ。本当にただの偶然だった。


『努力できる環境』さえ出逢いや巡り合わせによって影響されるのに、『本人の努力』だけで本当に何もかもが決まるとでも思ってるの?。


『日本という恵まれた国に生まれておいて文句を言うな』という人は、『日本という国に生まれることができたのは本人の努力』だとでも思ってるの?。


『努力ができる環境すら、本人の努力ではどうにもできないことだ』という事実そのものを、『日本という恵まれた国に生まれておいて』という言葉がまさしく表してるよね?。


沙奈子たちと一緒に自転車で水族館へと向かおうとしてる結人くんだってそうだ。実の母親に殺されかけて、でも鷲崎わしざきさんと出逢って安全な環境にいられるようになって、その上で、僕たちと出逢って、こうして沙奈子や千早ちゃんや大希くんと友達になれたのは、結人くん自身の努力だけじゃなかった。


『日本という恵まれた国に生まれておいて』という言葉がまさしく『本人の努力だけじゃどうにもならない現実があるという事実を示してる』と認めるべきなんじゃないのかな。


本人の努力だけでなんとでもなるのなら、どの国に生まれたって何とかなるんじゃないの?。



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