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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
1901/2601

千九百一 玲緒奈編 「星谷さんのおかげ」

九月十日。金曜日。晴れ。




『親ガチャ』の話については、僕も自分の両親については『ロクなものじゃなかった』としか思わない。


それでもこうして幸せにはなれてるけど、これは決して僕自身の努力だけで掴めたものじゃない。『努力が足りない』とか言ってる人は、自分の努力だけで上手くいったとでも思ってるのかな。僕にはそんなのは思い上がりとしか思えないんだけどな。


今の僕があるのは、沙奈子の、山仁やまひとさんの、絵里奈の、玲那の、星谷ひかりたにさんの、みんなのおかげなんだ。僕一人の努力で成しえたことじゃないんだよ。そういうものに恵まれなかった人に対して『努力が足りない』なんて、とても言えないな。そして、ネットの向こうにいる見ず知らずの赤の他人がどれだけの努力をしてきたのかなんで分かるの?。『努力が足りない』なんてなんで言えるの?。


『見ず知らずの赤の他人がどの程度の努力をしてきたのかなんて分かるはずがない』という現実さえ認めることができない人がしてる『努力』ってなに?。


だから僕は、『親ガチャ』って言葉を使わずにいられない人について、そういう境遇に置いたままにしてることが残念に感じる。


もし、沙奈子や玲緒奈れおなが、


『親ガチャに外れた』


なんてことを言い出したなら、僕はそんなことを言わずにいられない境遇にあることを放っておこうとも思わない。


『親ガチャ』という言葉は、親自身が自らに対する戒めとして心に留めておくべき言葉だと僕は感じた。子供が使う言葉というよりも、親自身が使うべき言葉だと思うんだ。


僕の記憶のどこを掘り返したってスマホやパソコンのデータを検索したって、『玲緒奈が僕と絵里奈に対して『生んでほしい』とお願いした事実はどこにもない』んだよ。僕と絵里奈の勝手で玲緒奈をこの世に送り出したという現実は、何をどうしたって変えようがない。僕は、その現実と向き合えないような親ではいたくない。


加えて、僕たちの今があるのは、星谷ひかりたにさんのおかげというのが大きいとつくづく思う。


だけど星谷さん自身はそれについて、


「私が皆さんのお力になりたいと思うのは、あくまで千早とヒロ坊くんが沙奈子さんの友人だからです。そして、皆さんが千早やヒロ坊くんのことを労わってくれるからというのが大前提になっています。でも、だからこそ私は思うのです。他者に恨まれることがいかに自身にとってリスクになるかということを。


皆さんがもし、千早やヒロ坊くんを蔑ろにするような方であれば、私は逆に皆さんにとって『敵』になるでしょう。『情けは人の為ならず』ということをこれほど端的に表すことになる事例もないんじゃないでしょうか」


とも言ってくれてる。だけど彼女と出逢えたこと自体は、僕たちの努力でもなんでもないんだよね。



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