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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
1899/2601

千八百九十九 玲緒奈編 「共感のしようもない」

九月八日。水曜日。晴れのち雨。




そんな感じで玲緒奈れおなは順調なんだけど、その一方で絵里奈の方は、


「最近、玲緒奈が乳首を噛むようになってきたんです。それが痛くて……」


困ったように言ってきた。


「じゃあ、もう無理せずに母乳の方はやめる?」


僕がそう提案しても、


「いえ、玲緒奈が自分でやめるまでは続けます」


って。


彼女が自分でそう言うのなら任せてもいいんだけど、無理はしないでほしいなとは思うかな。


絵里奈の方針で、玲緒奈に対しては、無理に母乳をやめさせようとはしないことにしてる。絵里奈がそれでいいのなら僕も無理にやめさせようとは思わない。


ただ最近、玲緒奈の方がそんなに母乳は飲まなくなってるらしい。離乳食を始めたことで他にもいろんな味があることを知って、母乳に飽き始めてる気はする。だから無理にやめさせようとしなくても、そのうち飲まなくなる予感があるんだ。でも、歯が生えてきた玲緒奈が乳首を噛むことで痛みがあるのなら、それはそれで絵里奈の方も無理に続けようとしなくていいと僕は思ってる。


でも、だからこそ、玲緒奈が母乳に飽き始めている気配があるからこそ、玲緒奈自身が見向きもしなくなるのを待ちたいと絵里奈は思ってるんだ。その上で、『乳首を噛まれて痛い』という事実を知ってほしいというのもあるんだろうな。だとしたら僕は、絵里奈を労うだけだ。『文句言うくらいならやめろ!』とは言いたくない。自分が望んでやってることでも時には弱気になってしまうことだってあるのが人間というものだと思うしね。ちょっとした愚痴をこぼすことすら許さないなんて、何様なんだろうと僕も思う。


その一方で、まったく無関係な赤の他人に対してまでその愚痴を聞いてもらおうとする心理については僕にはよく分からない。事情を知らない人だと共感のしようもないだろうし。


だとすれば、こうして一緒に玲緒奈を育ててる僕が、そういう愚痴についても耳を傾ける必要があるんじゃないかなって気がしてる。だって、絵里奈は僕の代わりに玲緒奈を産んでくれたんだからね。僕が産めるのなら僕が産んでもよかったし、母乳だって出るなら僕があげてもよかった。けれど僕にはそれができないんだから、代わりにやってくれてる絵里奈を労うのは、素直な気持ちだよ。


『子供は親に育ててもらったんだから感謝するのは当たり前。恩を感じるのは当たり前』


そんなことを言う人もいるけど、男性でそれを言う人は、『自分の代わりに子供を生んでくれた奥さんに感謝してる』の?。『自分の代わりに母乳を与えてくれてる奥さんに感謝してる』の?。


すごく疑問なんだ。



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