千八百九十七 玲緒奈編 「みんなで自転車で行くの」
九月六日。月曜日。晴れ。
ついに結人くんも電動アシスト自転車を買ってもらえたことで、水族館までみんなで自転車で行くこともできるようになった。もちろん、あんまり暑かったり天気が悪かったりしたら無理せずハイヤーとかで行くことになるだろうけど、沙奈子も実は楽しみにしてるみたいだ。
「みんなで自転車で行くの、いいと思う」
と言ってくれてる。しかも、沙奈子と千早ちゃんと大希くんと結人くんは、色は違うけどお揃いの自転車なんだ。沙奈子はアクアグリーン(ほぼ水色)、千早ちゃんはナイトパープル、大希くんはスカイブルー、結人くんはダークグレイ(と言うかどう見ても黒)と、それぞれが好きな色を選んでる。
ただ、それはいいんだけど、やっぱり事故とかは心配だし、万が一のことがあった時にちゃんと証拠が残るようにと、それぞれドライブレコーダーも用意することにした。せっかく給付金が出るんだからケチケチせずにつぎ込もうと思う。
星谷さんも、
「それがいいと思います。千早とヒロ坊くんの分は私が出します」
と言ってくれてたし。
「私もいいと思います」
「異議な~し!」
絵里奈と玲那も賛成してくれたから、沙奈子と僕と絵里奈のためのそれを、大手ネット通販サイトで約五千円のを注文した。玲那も『三代目黒龍号』で使ってるものだった。
「まあ、正直、安かろう悪かろうって点はあるけど、万が一の時の証拠用だと割り切れば十分だと思うよ。盗難とかの可能性もあるし、この程度なら盗まれたとしてもダメージも小さくて済むしさ」
だって。
盗まれるかもしれないってことを前提で買うというのも情けない限りだけど、そういうのがあるというのも現実だからね。
あと、電動アシスト自転車にしたことで、暗くなるとライトが自動で点灯するようになった。だからうっかりライトを点け忘れることはなくなった。夜、自転車を走らせてると、真っ暗なところからいきなり自転車が飛び出してくることがある。僕は暗いところに歩行者がいるかもしれないといつも考えてゆっくり走ってるから咄嗟の時にはすぐ止まれるけど、無灯火でかなりのスピードで走ってるのがいるから、もしそういうのにぶつけられた時には、相手が無灯火だったことをドライブレコーダーで確認できればと思う。こういうのも、映像として記録がないと、『無灯火だった』『ライトは点けてた』と言い争いになるからね。
もっとも、『新型コロナウイルス感染症』の件で在宅仕事になったのもあって、夜に自転車に乗ることもほとんどなくなったけど。




