千八百九十三 玲緒奈編 「そのアニメの楽しみ方」
九月二日。木曜日。雨のち曇り。
玲那が言ってた。
「なんかさあ、『辛かったり悲しかったりする過去を背負ってるキャラが今は幸せに暮らしてる姿を描く』ってコンセプトのアニメがあるんだけどさ、それに対して『悲しい過去とか要らない!』『シリアスとか要らない!』『そんなもの求めてない!。視聴者のニーズを分かってない!』とか言ってるのがいるんだけど、そういうのってホントただの『モンスターカスタマー』だよね。だってそうじゃん?。そのアニメは元々『辛かったり悲しかったりする過去を背負ってるキャラが今は幸せに暮らしてる姿を描く』のがコンセプトなんだよ。『優しい世界で美少女がひたすらキャッキャうふふ♡する』のがコンセプトのアニメじゃないんだよ。『辛かったり悲しかったりする過去を背負ってるキャラが今は幸せに暮らしてる姿を愛でる』のがそのアニメの楽しみ方なんだよ。そういう部分が好きでファンになった人もいるんだよ。それなのに自分の好みを一方的に押し付けようとすんの。
そりゃね、『優しい世界で美少女がひたすらキャッキャうふふ♡するアニメ』も面白いよ。私も好きだ。でもさ、『辛かったり悲しかったりする過去を背負ってるキャラが今は幸せに暮らしてる姿を愛でるアニメ』だってそれはそれで面白いし、作品として成立してるんだよ。よく、『読者や視聴者のことを考えろ。大事にしろ』とか言うのがいるけど、だったら、『辛かったり悲しかったりする過去を背負ってるキャラが今は幸せに暮らしてる姿を愛でるアニメのファン』のことも考えなきゃおかしいじゃん。『辛かったり悲しかったりする過去を背負ってるキャラが今は幸せに暮らしてる姿を愛でるアニメが好き』で見てるのに、それを、『優しい世界で美少女がひたすらキャッキャうふふ♡するアニメに変えろ!』とか、それこそファンを蔑ろにする行為以外の何物でもないじゃん。
結局さ、『読者や視聴者のことを考えろ。大事にしろ』とか言ってるヤツってさ、『読者』とか『視聴者』とか主語を大きくしてるだけで、実際は『自分の好みや都合に合わせろ』って言いたいだけじゃん。今のそのアニメを楽しんでるのからしたらさ、そうじゃないものに変えるってこと自体が『ファンを蔑ろにする行為』なんだってなんで分かんないんだろ。自分のことしか考えてないんだよ。私は『辛かったり悲しかったりする過去を背負ってるキャラが今は幸せに暮らしてる姿を愛でるアニメ』を楽しんでんの!。『優しい世界で美少女がひたすらキャッキャうふふ♡するアニメ』は別ジャンルだから。『ケモノ』と『ケモミミ』くらい別物だから!」
「そ、そうなんだ。それは大変だったね」
僕はそうとしか応えられなかったけど、玲那の言葉にはちゃんと耳を傾けたいと思ってる。




