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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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千八百八十六 玲緒奈編 「いちいち腹を立てるのも」

八月二十六日。木曜日。晴れ。


今日はまさしく猛暑日だった。『新型コロナウイルス感染症』のことも気になるけど、熱中症にも気を付けなくちゃね。




沙奈子たちが学校から帰ってきていつものように三階に集まってると、バイトが休みだった波多野さんが、ビデオ通話でまた愚痴をこぼしてた。


「今日さあ、店の中に『ウンコ』が落ちてたんだよ」


「は?」


「え?」


「どういうこと?」


「ええ~っ?」


無線のヘッドセットを付けて会話に参加してた僕と絵里奈だけじゃなく、千早ちはやちゃんと大希ひろきくんまで声を上げる。


「え?。もしかして猫とか犬とかがいつの間にか入り込んでて?」


僕が聞き返すと、


「分かんないです。そんなに大きくはないと思うから人間のじゃない気はするけど……」


すると、たまたま休憩中だったイチコさんが、


「それってもしかすると、ちっちゃい子が漏らしたのが落ちたのかも」


と会話に加わってきて。


「まさか…、そんなことある?」


千早ちゃんが声を上げると、イチコさんは、


「お父さんが言ってたんだけど、私がまだ二歳くらいだった時に、おむつを穿かずに遊んでたら、いつの間にかウンチしてて、それがパンツとズボンの隙間から転げ落ちてきたことがあったんだって。まだトイレトレーニングの真っ最中だったし、遊ぶのに夢中で『ウンチ』って申告するのを忘れてたみたい。その時はたまたまお父さんがすぐに気付いたから大丈夫だったけど、それでもう自分でちゃんとトイレに行けるようになるまでおむつ穿かせとこうって思ったみたい」


って自分の失敗を明かしてくれた。普通はあまり言いたくないことかもしれないけど、ほとんど家族同然の間柄だし、しかも僕たちの間では『誰かの失敗を嘲笑う』ってことがそもそも基本的にないからね。


「マジか……。いや、確かにちっちゃい子連れたお客は何人も来てたけどさ……」


波多野さんが驚いたように、でもなんだか納得できたような感じで呟いた。


そこで僕は、


「もしかしたらそういうこともあるかもね。いやがらせとかの可能性だってないとは言えないかもしれないけど、またすぐに同じようなことがなかったらやっぱり偶発的な『事故』だと思う。あんまり気にし過ぎない方がいいのかも」


って告げた。すると波多野さんも、


「そうだね。店長も、『もしまた同じようなことがあったら報告して』って言ってたし。いやしかし、そんなこともあるんだ……」


だって。そこにイチコさんがまた、


「そういうことがあるのが子育てってもんなんじゃない?。お父さんはそれこそ、『いちいち腹を立てるのも馬鹿らしくなるくらいいろいろあるよ。だからお父さんは腹を立てないで済むようにおむつを無理に外そうとは思わなくなったし』って言ってたな」


と話してくれたんだ。



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