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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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千八百八十一 玲緒奈編 「もちろん簡単なことじゃない」

八月二十一日。土曜日。曇り時々雨。




波多野さんや田上たのうえさんの愚痴にも耳を傾けつつ、基本的には玲緒奈れおなには聞かせないようにしてる。誰かのことをざまに罵る人の姿は、なるべく見せないようにと思うから。


沙奈子はもう、波多野さんや田上さんが抱えてるものを知ってるからついついああいう言い方になってしまうのは理解できてても、玲緒奈にはまだそういうのは理解できてないからね。誰かを罵る大人の姿を見れば、『大人がそうしてるんだから』と学び取ってしまう可能性は決して低くない気がする。


実際、普段から誰かを悪し様に罵ったりする人って、自分ではそれを『よくないこと』だと思ってないのも多いんじゃないかな。じゃあ、なぜそれを『よくないこと』だと思わないの?。誰に『そうするのは当たり前』『言葉も選ばずに思ったことを表に出すのは正しいこと』だと教わったの?。普通はそういうの、『よくないこと』だといろんなところで言われると思うけど、それをただの『建前論』『綺麗事』と断じて、


『どうせお前らも腹の中じゃこんな風に思ってるんだろ?。素直になれよ』


っていうのが本当は正しいという風に誰から教わったの?。それは、身近な大人が、外では体裁を気にしてたりするのに家の中とか子供の前では誰かを罵ってたりするからじゃないの?。だから子供も、『外での姿はただの仮面。でも本当は』みたいに思うんじゃないの?。


僕自身、両親の様子を見ててそう感じてた。周囲からは『教育熱心ないい親』に見えるような態度をとってるのに、自分より立場の弱い相手とかには、尊大な態度を取ったり汚い言葉で罵ったりもしてた。だから、


『立派そうな大人も、みんな同じなんだろうな』


と実際に思ってた。だから、『どうせお前らも腹の中じゃこんな風に思ってるんだろ?。素直になれよ』と考えてしまう人の気持ちも、想像できなくはないんだ。僕もそんな風に思ってしまうこともある。


でもそれじゃ、『大人』ってなんなの?。ただ外面を取り繕うのが上手いだけの人間のことを言うの?。だとしたら僕は大人になんてなれなくていいよ。


だけど僕はそうじゃないと思ってる。自分のよくない部分、好ましくない部分ときちんと向き合って、それを正当化せずにいられる、誰かに悪態を吐くことを『他の奴らもやってるだろ!?』と他人の所為にして言い訳せずにいられるのが大人なんだと感じるんだ。


もちろん簡単なことじゃないかもしれないけど、『簡単じゃないから』で諦めるなら、それこそ子供に対して『簡単に諦めるな!』とか偉そうに言わないでほしいと思う。



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