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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
1880/2601

千八百八十 玲緒奈編 「彼女の愚痴そのものは」

八月二十日。金曜日。雨。




昨日は木曜日だったから、波多野さんも自分の部屋にいつつ、ビデオ通話で玲緒奈れおなの様子を見てくれていた。それと同時に、


「小父さんもそうだったけど、山下さんもうちの両親とはまったく違ってるんです。子供との接し方が。うちはそれこそ父親がとにかく『自分の言うことを聞け!』で、君臨してました。でも、自分じゃ自分のこともまともにできなくて母親におんぶにだっこで、それこそ『大きな子供』だった。そんなだから私は父親のことなんて尊敬してた覚えがないです。小さい頃は好きだった気もするけど、小学校の高学年の頃にはデリカシーの欠片もないしで、マジ嫌いでしたよ。


上の兄はまだ父親を反面教師にしたのかマシでしたけど、事件を起こした下の兄はそれこそ父親に生き映しで。大したこともできないのに態度だけは大きくて、偉そうで。マジ最悪。バカ兄貴が事件起こしたことで母親が家を出ていったのも、すごく気持ちが想像できますよ。いい歳して仕事してるだけの子供の相手なんてしてられないでしょ。あんな状態で。


せめて父親が父親らしいところ見せてくれてりゃまだ救いもあったかもですけど、三人も子供作っておいて、その中の一人があれで、散々私があのバカ兄貴のヤバさを忠告してたのに全部無視して妹に手を出そうとしてもほっとくわ、んで、とうとう事件起こしたら被害者面して引きこもりですよ。マジふざけんな!ってのが正直な気持ちです」


イヤホン越しに聞こえてくる彼女の愚痴に、耳を傾ける。彼女が僕たちの中でそうやって正直な気持ちを吐露するのも、それこそ見ず知らずの赤の他人や、仕事先で誰かに当たったりしないようにするために役立ってるんだと実感する。


波多野さんには、玲那を支えてくれた恩もある。山仁やまひとさんのところでは、沙奈子がずっとお世話になってた。そして今では、家族みたいなものだから。


すると田上たのうえさんも、


「私の父親は、家のことはぜんぜんしないけど、ピカとのこととかでちょっと見直せたからよかったんですけど、正直、尊敬はできないって点ではカナと同じですね。それでも、母親よりはマシかも。うちの場合は母親が本当に問題なんです。今回の特別定額給付金だって、全部自分の懐に入れる気満々ですよ。一応、私の住民票はまだ自宅に置いてましたから。こんなことなら今の家に移しとけばよかった……」


住民票のことはついつい面倒だからってことでそのままにしてあったんだろうし、それはまあ田上さん自身のミスかなとは思うけど、彼女の愚痴そのものは、やっぱり耳を傾けたいと思うんだ。それに僕一人で聞いてるわけじゃなくて、絵里奈や玲那やイチコさんも聞いてくれてたしね。



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