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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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千八百七十八 玲緒奈編 「苦い経験になったかも」

八月十八日。水曜日。雨。




今回のことも、沙奈子にとっては苦い経験になったかもしれない。だけど、何度も言うように、仕事をしていればこういうことも少なからずある。だからその現実の一端を知ることになったのは、ある意味ではいい経験でもあったかもね。


確かに、沙奈子も他者の感性や価値観に惑わされずに自分のやりたいようにやってるかもしれない。だけど彼女の場合は、『お客のニーズに合わないものを作ればそれだけ売り上げが落ちる』という形でダイレクトに評価が返ってくる。だからこそ、沙奈子が提案するデザインのうちで実際に商品化するものを絵里奈や玲那が選んでるんだ。しかも、発表したドレスの評判を基に、量産化するかどうかの判断をする。絵里奈や玲那が採用してもいいと判断する時点でもそうだし、最終的に量産化が決まるかどうかという形でも、評価されるんだ。


もっとも、絵里奈と玲那が発表するドレスを選ぶのは、『沙奈子一人に責任を負わせない』という意味もあるけど。絵里奈と玲那が選ぶことで、『そのドレスを選んだのは自分達だ』という形で一緒に責任を負うんだ。


だけど、量産品の製造を請け負っている側の会社は、あくまで契約に基いて生産するだけ。ドレスが売れても売れなくても作った分の代金は受け取れる立場だ。なのに、一社員が、一職人が、『こんなもの作ってられるか』というだけの理由で手を抜くというのはおかしいと、僕も思う。


だけどその上で、沙奈子に掛かったストレスについては、家族みんなで受け止める。決して沙奈子一人に負わせない。もちろん、絵里奈にもね。


それによって、このストレスを解消するために他の誰かに八つ当たりとかせずに済むようにしたいんだ。


今の社会で生きていく上において、今回のようなことはこれからも何度もあると思う。そういうのがない社会になってほしいとは思いつつ、僕や沙奈子が生きているうちにはたぶん実現しないとは思うから、あくまでそれが『起こりうること』という前提で心構えを作っていく。


そして同時に、ただ『我慢すればいい』『堪えればいい』じゃなくて、『我慢できるようにするにはどうすればいいか?』『耐えられるようにするにはどうすればいいか?』という、ちゃんと実効性のある対処法についても考えていきたい。本人の資質に頼り切ったやり方じゃ、ほとんど運頼みってことになるだろうからね。


僕は、運頼みで沙奈子や玲緒奈れおなを育てたくはない。そんなの、大人として恥ずべきことだと思う。



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