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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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千八百七十六 玲緒奈編 「そのための試作品だし」

八月十六日。月曜日。曇り時々雨。




今日も、場所によっては大変な雨になるらしいけれど、この辺りは大丈夫そうだったから、沙奈子は、絵里奈と一緒に山下典膳やまもとてんぜんさんのギャラリーに新作のドレスを届けに行くことにした。『せっかく電動アシスト自転車にしたんだから自転車で』とも考えたそうだけど、天気は必ずしも良くなかったし、タクシーで行くことに。


ただ、念のため、沙奈子は酔い止めの薬を飲んでいく。以前に比べるとずいぶんとマシにはなりつつ、まだ乗り物はあまり得意じゃないんだ。


取り敢えず薬を飲んでいれば大丈夫なんだけどね。


ギャラリーでは、山下やましたさんから歓待を受けて、楽しかったらしい。でも、やっぱり『新型コロナウイルス感染症』のことがあって、マスクを着けたままだったり、換気しながら扇風機も使ってという状態だったみたいだね。しかも、何度もアルコールで消毒したり。


本当に大変だな。このまま収まってくれればいいんだけど……。


一方、沙奈子が出掛けてる間も、千早ちはやちゃんと大希ひろきくんと結人ゆうとくんは、いつものように三階で寛いでた。その上で、お昼を作ってくれたりする。千早ちゃんと大希くんはもちろん、今では結人くんも手伝ってくれてる。食器を用意したり、使った調理器具を洗ってくれたりって形で。


最初は千早ちゃんに、「結人も手伝ってよ」って言われたから渋々だったのが、すっかり当たり前になってる。しかも三階の掃除も一緒にしてくれる。『生活力』ってものが身に付きつつあるのかもしれない。そうやって結人くんがやってられるのも、別に反発しなくちゃいけない理由がないからだっていうのが分かる。『嫌な相手』から頭ごなしに命令されてるわけじゃないからだっていうのが。


沙奈子や千早ちゃんや大希くんに一方的にお世話になってることを、結人くん自身、『申し訳ない』って気分になってたみたいで、手伝うことでその申し訳なさを緩和することができてるらしい。


そんな風に三人が厨房でお昼を作ってる時、


「あちゃ~、これはダメだな」


と玲那が声を上げたのが、二階の和室の沙奈子の机の上に置いてある僕のスマホにも届いてきた。『SANA』の事務所にいる玲那が僕に声を掛けられるように、繋ぎっぱなしにしてたから。


どうやらイチコさんと田上たのうえさんと話してたらしいし僕は敢えて会話には参加せず、この時は何がダメなのか分からなかったんだけど、沙奈子と絵里奈が帰ってきたら、


「ああ、確かに、解釈違いだね」


「うん……」


玄関でそんな風に絵里奈と沙奈子が言ってるのが、僕にも聞こえてきた。


実は、先々月に発表した沙奈子のドレスの量産品を作るにあたってその試作品が事務所の方に届いたんだけど、また印象が違ってたらしいんだ。


こういうことはどうしてもあるからね。そのための試作品だし、ここからクオリティを詰めていくわけだ。



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