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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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千八百七十五 玲緒奈編 「どーんと来てよ!」

八月十五日。日曜日。雨。




今日は終戦記念日。だけど僕は、『記念日だから』と何か特別なことをしなくちゃという感覚がない。こういうことはいつだって心に留めておくべきことだと思うから。母の日にも、父の日にも、何か特別なことはしなかったし。


そもそも、僕はまだ、沙奈子とは養子縁組していない。未成年との養子縁組の場合には、親権者の同意が必要らしいから。つまり、沙奈子の実の父親か母親の同意が必要なんだ。どちらもまったく消息が不明だから、こういう場合にはまた別の判断が下されるんだろうけど、たぶん、家庭裁判所での審判を受けることになるんだろうけど、正直なところそこまでしようとは思ってない。養子縁組するにしても、沙奈子が二十歳を迎えれば当事者同士の意思だけでそれが行えるようになるから、その時点で、彼女が望むならそうすればいいと思ってるんだ。


養子縁組していないから、実際には鷲崎わしざきさんと結人ゆうとくんの関係と同じく、『親』じゃなくてただの『保護責任者』でしかないのかもしれないけど、それについては気にしてない。


その上で、あくまで『親』として僕は沙奈子と接する。いろいろ話をする。『お説教』としてじゃなくて、それこそ日常的な雑談として。


「世の中には、他者を傷付けることを『権利』みたいに思ってる人もいるらしいけど、僕はそうは思わない。自分の思い通りにならないからって相手を傷付けていいと考えるから、自分も誰かから傷付けられるんだと思う。だって、『自分の思い通りにならない他者を攻撃するのは権利』だと考えてるなら、他の誰かも同じことを考えていてもおかしくないからね。むしろ、そう考える人が自分以外にいないなんて思う方がどうかしてる。自分が思い通りにならない誰かを攻撃するなら、また別の誰かが自分を攻撃してくることも認めなくちゃおかしいよ。


だから、沙奈子、これからもきっと、沙奈子を傷付けようとする人は現れると思う。もうすでにネット上に何人もいるのと同じで。だけど、自分がそうやって攻撃を受けてるからって、そのストレスを他の誰かにぶつけることを正しいとは思わないでほしい。もしぶつけたいなら、僕にぶつけてほしい。僕は沙奈子の親だから。沙奈子の親じゃない他の誰かには、沙奈子のストレスの捌け口にならなきゃいけない義務はないから」


そんな僕の言葉に、


「私も。私は沙奈子ちゃんのお母さんだから。お父さんと同じで、沙奈子ちゃんの親だから。私にもぶつけてくれていいんだよ」


絵里奈が続いてくれる。すると玲那まで、


「私だって沙奈子ちゃんのお姉ちゃんなんだから、どーんと来てよ!」


言ってくれたんだ。そんな僕達に対して、沙奈子は、


「うん。そうする」


嬉しそうに言ってくれたのだった。



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