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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
1874/2601

千八百七十四 玲緒奈編 「お父さんは思わない」

八月十四日。土曜日。雨。




今日も雨だし、災害に対する警戒が呼びかけられているそうだから、家でおとなしくしている。この辺りはそこまでの不安を駆り立てられるような降り方じゃないけど。念のためということで。


「ごめんね、沙奈子」


事情を分かってもらうために説明する僕に、彼女も、


「いいよ。お父さん。水族館はまた行けばいいし」


そう言ってくれる。沙奈子がそうやって僕の言葉に耳を傾けてくれるのは、僕が彼女の言葉に耳を傾けて、気持ちを汲もうという姿勢を見せてるからだと実感する。


それをしようとしない相手の言葉なんて、聞きたいとは思えないのは僕も同じだ。その上で、


「ところで、最近は特に、誰かを傷付けようとする発言をした人が『炎上』するってことが目に付くよね」


玲緒奈れおなに離乳食を食べさせてあげながら、沙奈子に語り掛ける。


「そうだね……」


テレビもネットもあまり見ない沙奈子でも、そのくらいは承知していた。千早ちはやちゃんや大希ひろきくんがそれについてよく話をしてるから。だからこそ僕は、親として、補足説明が必要だと感じてる。『こうしろ!』と押し付けるつもりはなくても、沙奈子が触れる情報について『それを租借し自分の中に落とし込むための情報』も必要だと思うんだ。だからそのためにも、


「誰かを傷付けたり蔑ろにしようとするなら、それがそのまま自分にも返ってくることを覚悟しなきゃいけないと思う。自分だけが一方的に誰かを傷付けることが許されるなんて、そんな世の中が正しいなんて、お父さんは思わない。『言いたいことが言えない社会なんておかしい!』と言いながら誰かを傷付けたり蔑んだり貶めたりするような発言をする人もいるけど、でもそれは、他の誰かから自分も傷付けられて蔑まれて貶められるのを認めなくちゃ成立しないと思う。


沙奈子、僕は沙奈子の親だ。沙奈子がもしこの世界に何か不平不満を感じるのなら、まずはお父さんに言ってほしい。他の誰かにぶつけることで解消しようとしないでほしい。どこかの誰かにそれをぶつけても解消することは滅多にない。それどころか、余計に拗れるだけの方が多いと思う。沙奈子のドレスに対して好き勝手言ってる人たちも、結局は自分の不平不満を沙奈子にぶつけることで少しでも解消しようとしてるだけだと思うし。デザインの好き嫌いなんて、それは完全に個人の主観だから。今の沙奈子のドレスを好きだと言ってくれる人がいるのと同じなんだ」


知っていてほしいことを伝えるんだ。


親だから。



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― 新着の感想 ―
[一言] どちらも悪意のある意見(思想)を 相手にぶつけているだけですからね(^_^;) 多数が勝つし、世間は多数を支持するんです 自由な多数決が正しいなんて、 ナチスで懲りたと思っているんですけど…
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