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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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千八百七十三 玲緒奈編 「僕にとって家族は家族だから」

八月十三日。金曜日。雨。




全国的に大雨に警戒が必要らしいけど、この辺りじゃそこまでの印象がある降り方じゃなかった。それでも、念のための用心は欠かさないようにと思う。


実は今日、沙奈子の新作ドレスを山下典膳やまもとてんぜんさんのギャラリーに届けに行く予定だったのも、天気が回復してからにする。出掛けた先で災害に巻き込まれたりしたら目も当てられないし。


ところで、沙奈子には、ネット上に書き込まれてるドレスに対してのあれこれについては、知らせないようにしてた。何しろそこには、好意的な意見だけじゃなくて、それこそ見るに堪えないような、『辛辣』とか『辛口』とかというのとは全く違うただの罵詈雑言もたくさんあるからね。


でも、だからって、好意的な意見しかないと沙奈子に教えるのも違うと思うんだ。そこで、


「世の中にはいろんな人がいて、全員が沙奈子のドレスを気に入ってくれるわけじゃないのは、分かっておいてほしい」


と伝えておいた。すると彼女も、


「うん……、分かってる……。だから私は、自分が思った通りにドレスを作るだけ……」


そんな沙奈子に、千早ちはやちゃんが、


「そうだよ。沙奈は沙奈なんだから。私は今の沙奈が好き。カッコいいと思う。ネットの評判ばっか気にして自分の思ったドレスを作れない沙奈なんて沙奈じゃないと思うんだ。仕事だったら売れなきゃいけないんだろうけどさ。でも、売れるためにそれまでの魅力みたいなのを失うのも違うと思うんだ。何があったって沙奈は沙奈だよ。もし、ドレス作れなくなっても私が沙奈を養う!」


とまで言ってくれてる。


もちろん、千早ちゃんに沙奈子を養ってもらおうとは思ってないけど、そう言ってくれる友達がいるのは、本当に嬉しい。


僕たちがそんなことを思ってる中、ネットで有名な人が大変な失言と言うか、誰かの命さえ蔑ろにするような発言をしたらしい。本音ではついそう思ってしまうというのがあるのは分かる。僕だってそうだ。沙奈子に対して『この世から消えてほしい』的なことを言うのがいるらしいのを、『お前こそこの世から消えろ』と思ってしまったりもする。だから『そう思ってしまう』こと自体はやめられないんだっていうのも分かる。


だけどそれでも、僕には、どうしてそんな発言を公に向かってするのか分からない。玲那が事件を起こしたことで大変なことになったように、大変なことになったら自分の家族まで苦しむのに。


そして僕は何より、自分の家族の命の価値を赤の他人に決められたくないんだ。どんな事情があったってどうなったって、僕にとって家族は家族だから。だったら、自分が余所の家族の命の価値を勝手に決めるのもおかしいと思うんだ。



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