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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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千八百六十八 玲緒奈編 「無理に我慢してそれで」

八月八日。日曜日。晴れ。




何やら台風が近付いてるらしいけど、あんまりそんな印象もなく暑い。


だから、エアコンを利かせた部屋でのんびりする。『ウォール・リビング』内を猛然と進撃する玲緒奈れおなを見ながら。


本当に元気な子だよ。とても、僕や絵里奈の子とは思えないくらいに活動的で朗らかで、いっつもニコニコしてくれてる。かと思うと、ちょっと気に入らないことがあればすぐにぐずって怒ってってしてくれる。だけど僕は、むしろそれがありがたい。そうやって素直に反応してくれるから機嫌を掴みやすくて、対処もしやすいんだ。


「どうしたのかな~?。なにがあった~?」


僕が穏やかな表情で問い掛けると、


「ぱやぽあや、ぱあ!」


何やら不満を口にしてくれるんだ。何を言っているのかはさすがに分からないけど、僕がそうやって、


「うんうん。ぱやぽあやなんだ?。そうかあ」


って耳を傾けてるうちに機嫌を直してくれていくんだよ。『何かをしてほしい』というよりも、自分の不満に耳を傾けてほしい、ちゃんと話を聞いてほしいってことなのかもしれない。


沙奈子の時もそうだった。沙奈子はあまり不平不満を口にするタイプじゃなかったけど、僕はとにかく、彼女の言葉に耳を傾けることを心掛けてた。聞けること聞けないことはあっても、『言葉に耳を傾ける』ことだけは蔑ろにしたくなかった。


正直、僕だって、嫌な相手の言葉になんて耳を傾けたいとは思えない。僕の家族に嫌なことをするような人の言葉なんて、聞きたくもないと思う。でも、だからこそ、家族の言葉にはちゃんと耳を傾けたいんだ。何を思ってるのか、何を感じてるのか、そういうことを僕は知りたい。知って、解決できることなら解決していきたい。


『お前らは、僕の言うことに従っていればいいんだ!』


なんて、言いたくもない。なにしろ僕は、『自分は間違ったことなんてしない』みたいな自信なんか少しも持てないから。僕の言うことにさえ従っていれば間違いないなんて、思い上がれないから。


僕は天才でもないし賢人でもない。ただの凡夫だ。だから間違ったこともすると思う。失敗だってすると思う。それが分かってて偉そうになんてできないよ。


僕にできることは、家族の言葉に耳を傾けるだけ。


沙奈子、絵里奈、玲那、玲緒奈。だから、何か思うことがあれば言葉にしてくれたらいい。無理に我慢してそれでどうしようもなくなってからキレたりするんじゃなくて、普段からちゃんと言葉にしてほしいんだ。


だったら、玲緒奈の言葉にだって耳を傾けるのは当然なんだよ。



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