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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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千八百六十五 玲緒奈編 「やらなくなったら途端に」

八月五日。木曜日。晴れ。




玲緒奈れおながしっかりとハイハイできるようになったことで、おむつ替えの難易度が格段に上がった。背面ずり這いをしていた時にも、おむつを替えようとしている時にずり上がっていこうとするから、すごく手早く交換する必要が出てきた。


仕方なく、足を掴んでおしりを拭いて、嫌がってぐずり出すまでに終わらせるように心掛けてた。だから、うんちが緩くて拭くのに時間がかかりそうだと判断したら、ためらわず、


「お風呂場でお尻洗う。用意して」


絵里奈に頼んでお風呂の用意をしてもらった。たったこれだけのことでも、絵里奈に手伝ってもらえたことがありがたかった。一人でやってたらあたふたしてしまってたと思う。ましてや、そこで絵里奈がゲームでもしてて、『今、手が離せない』とか言われたら、そういうことが何度もあったら、彼女への気持ちが冷めていってたかもっていう印象もあるんだ。そういう些細な積み重ねが、家族の関係を悪くしていくんだろうなって思う。


『育児は母親の仕事だ』なんて、そんな実感は僕にはまったくない。だって玲緒奈は僕の子なんだ。そして、僕が愛している絵里奈の子なんだ。玲緒奈の存在込みで僕は絵里奈を愛してる。『必要なのは絵里奈だけで玲緒奈は邪魔者』なんて、欠片も思えない。だったら、僕が玲緒奈の面倒を見ることに何のためらいが必要なんだろう。むしろそう思えないのなら、なんで結婚なんかしたんだろうってさえ感じる。


他人の結婚観や結婚した理由について面と向かってあれこれ言うつもりはないけど、少なくとも僕は、玲緒奈のことを絵里奈だけに任せてしまうつもりだったら、最初から結婚なんかしてない。その覚悟があるから結婚を決めたんだ。


だから、ハイハイを始めたことでおむつをパンツタイプのそれに変えたのにそれすら上回って脱走を図る玲緒奈のお尻を追いかけながらおむつを穿かせて、何とか一安心。


「お疲れ様です」


絵里奈が申し訳なさそうにそう労ってくれるから、


「ああうん、大丈夫」


って応えられる。覚悟は持ってても、ここで当たり前みたいな顔をされてたら、きっといい気はしなかっただろうな。ましてや、ゲームなんかに熱中されてたら。たまにならいいとしても、毎回となってくるとね。


ちなみに、玲那は三階で、沙奈子たちの勉強を見てくれてた。と言っても、


「正直、ついていけない……」


とこぼすくらい、沙奈子たちの方がよっぽど分かってるらしい。玲那自身、勉強はあまり好きな方じゃなくて、ただテストをこなすためだけにやってたから、やらなくなったら途端に記憶の彼方に消え失せたんだって。


うん、それは僕もすごく共感できる。



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