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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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千八百五十三 玲緒奈編 「はいはいひへふ!?」

七月二十四日。土曜日。晴れ。




今日も、水族館に行く必要がないから、沙奈子は家でゆっくりする。でも、千早ちはやちゃんと大希ひろきくんは、またあの旅館に、星谷ひかりたにさんに連れられて行ってるそうだ。


そして、結人ゆうとくんは、沙奈子と一緒に三階で過ごしてる。今日は波多野さんはアルバイトだからね。鷲崎わしざきさんが喜緑きみどりさんと一緒にいられるように、結人くんなりに気遣ってるんだろうな。


しばらく一緒に勉強した後、沙奈子はドレス作り。結人くんはゲームと、いつも通りにそれぞれ好きに過ごす。そんな二人の様子に、お互いを異性として意識してる様子は全くない。もうそろそろそういうことにも興味をもってもおかしくないと思うんだけど、沙奈子は人形のドレス作りの方がずっと楽しいし、結人くんは結人くんで、他人に対してまだそこまで気を許せないというのもあるんだと思う。


それについては、僕も共感できる。何しろ僕の場合には、絵里奈のことを意識し始めるまでは、それこそ興味もなかったし。女性に対してという以上に、他人に興味がなかった。不信感しかなかった。だから関わりたくなかった。


そんな僕に好意を抱いてくれてた鷲崎さんには申し訳ないけど、彼女のこともむしろ迷惑に感じてた。だから結人くんが僕と同じだったとしても、何にも不思議に感じない。


ただ、少なくとも中学高校の頃の僕と違って、『友達』と言える相手はいるみたいだけどね。沙奈子も、千早ちゃんも、大希くんも、結人くんの友達だ。


結人くん自身は、認めないかもしれないけど。でも、傍で見てる分にはちゃんと友達にしか見えないよ。


と、僕がそんなことを考えていた時、


「は、へほは、はいはいひへふ!?」


声を上げたのは、玲那だった。


『あ、玲緒奈れおな、ハイハイしてる!?』


って言ったのが、僕と絵里奈には分かった。玲那がおむつ替えをしてくれた後で、玲緒奈が自分でくるんと体を回転させて、「ふんす!」と両手両足で持ち上げて、パタパタと手を前に繰り出して、前進したんだ。


「え!?」


「マジ!?」


僕はまた、そして絵里奈も今度は、決定的な瞬間を見逃してしまった。


それは残念だけど、別にいい。たぶん、ここまで僕が一番、玲緒奈と一緒に過ごしてるからね。お風呂に入れるのも、夜泣きの対処も、僕がしてるから。僕が一番、玲緒奈をあやすのが得意だから。


その分、絵里奈や玲那が決定的な瞬間を目撃するくらい、いいと思うんだ。


しかも、まだたどたどしいハイハイで彼女が向かったのは、僕のところだった。僕の膝までたどり着いたところで、


「ふぷ~っ!」


『疲れた~』って感じで体を預けてきたんだ。


もう、自分でも目尻が垂れ下がってしまうのが分かってしまう。


「玲緒奈~、きたのか~♡」



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