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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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千八百五十 玲緒奈編 「どうせいいもの作ったって」

七月二十一日。水曜日。晴れ。




「あ~もう!。エンタメ関連会社のトップがあんな考えじゃ、そりゃ『いいもの作ろう』と努力するより『楽して儲けよう』とか思うよね!」


夜、


「パパちゃんお願い、一緒にお風呂入って!」


玲那がなんだかすごく不機嫌になってた。というのも、『エンタメ関連会社のトップ』という人が、ネット配信の番組で失言したらしいんだ。それで一緒にお風呂入ると、


「国民を『アホ』呼ばわりしてるんだけど、いやいや、その『アホ』相手に商売してるあんたは何なのさ!?。その『アホ』のおかげであんたは生活できてんでしょうが!。やっぱ、『読者のため』とか『視聴者のため』なんてのは、ただの建前で、『いかにアホから金を巻き上げるか?』ってことしか考えてないってのが丸分かりじゃん!。金儲けのためにやってるだけじゃん!。だから、『いいものを作ってたくさんの人に見てもらう』努力よりも、いかにコストを下げてパパッと作ってサッと利益を上げてあとは知らんぷりしようってスタイルにもなるんだよね!」


って憤慨してた。その姿を、沙奈子や玲緒奈れおなには見せたくないから、でも僕に不満を聞いてもらいたかったから、こうやって一緒にお風呂に入ってそこで発散するんだ。


「そうなんだ」


僕はただ、玲那が落ち着くまで聞き手に回る。そんな僕に、


「でもさ、読者や視聴者の方も、自分の好みに合わない作品をただひたすら貶してとかしてるから、作り手の方も、手間暇掛けてコストも掛けていいもの作るよりも、最初からある程度の利益は見込めそうなものをコストを掛けずにチャチャっと形にするだけでいいや的な気分にもなると思うんだよ。だって、いくら手間暇掛けてコスト掛けても、『自分の好みには合わない』ってだけでケチ付けるのがいるんだよ?。そりゃやる気も失せるよね。


ケチ付ける側は、『それで金貰ってるんだから!』とか言うけど、何?、自分は働いてお金貰ってないの?。それで顧客からボロクソに言われてもそれでも完璧な仕事こなそうと思えるっての?。嘘だよね。『こんな客にはこの程度でいいや』って考えるのがほとんどだよね?。私だって、理不尽なこと言ってくるお客にはついつい雑な対応してしまいそうになるよ。私の場合はこうやってパパちゃんがそういう私のストレスを受け止めてくれるからまだ抑えられてるけどさ。


だけど、お金貰ってる方だって人間だから理不尽なこと言われていい気分なわけないじゃん。もちろん、だからってエンタメ関連会社のトップがお客を『アホ』呼ばわりしてもいいとは思わないけど、『どうせいいもの作ったってケチつける奴はいる』って環境じゃ、あんな考えの人がトップになっても当然かなって気もする」


と、不満をぶちまけると、


「ごめん。ちょっとすっきりした」


って言いながらやっぱりスマホを防水ケースに仕舞って、体を洗い始めたのだった。



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