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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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千八百四十五 玲緒奈編 「誰かをイジメさせたりは」

七月十六日。金曜日。曇り時々雨。




今日は、沙奈子の学校で、『人権学習』というのがあったそうだ。ただ、正直、僕には『人権』というものがあまりピンと来ていないと思う。相手に人権があるかどうかという以上に、同じ人間であるなら、『人間として扱わない。という選択肢はない』というだけで。


『人権』という言葉を持ち出されると、もやもやした気分になるんだ。見ず知らずの女性に乱暴してそれをまったく反省もせず、妹である波多野さんの人生も滅茶苦茶苦にしたお兄さんにも『同じく人権がある』と言われても、ピンとこないんだよ。そして、幼い玲那に売春を強要して心を徹底的に壊した上にやっぱり微塵も反省していなかった、彼女の実の両親についても、納得できない。


もちろん、僕が納得できようとできなかろうと『人権がある』という事実は変えられないとしても、感情の面では確かに納得できないんだ。加えて、波多野さんや玲那を、ネットの匿名の陰に隠れて徹底的に痛め付けようとした連中にも『人権がある』とか言われたって納得できない。


だからこそ、僕は、僕の身近な人たちが、他者から、


『こいつに人権があるなんて思いたくない』


って目で見られるようなことをしてほしくないんだよ。不満があるなら、誰かに八つ当たりしてしまいそうな鬱憤があるなら、それを見ず知らずの赤の他人にぶつけるんじゃなくて、僕たちが受け止めたいと思うんだ。そうすれば、誰かが被害を受けることもないしね。


最近も、なにやら有名な芸能人が、過去に同級生をイジメていたことをまるで『武勇伝』のように自慢げにインタビューで語っていたことを掘り起こされて、大バッシングを受けているらしい。


なるほど、その文面を見ただけでも僕もすごく嫌な気分になった。明らかに過去の自分の行いを反省している人のそれじゃないと思った。と言うか、波多野さんのお兄さんとまったく同じ思考をしているという印象しかなかった。


『こんな奴にも人権があるのか……』


って思ってしまった。


その一方で、本人がそれを反省してるのかどうかは、その人のことをよく知らない僕には判断できない。ここでその人を口汚く罵ったりしたら、波多野さんや玲那を口汚く罵った連中と同じになってしまうと感じるから、僕は何も言わない。


だけど、こうやって過去の行為に対して『嫌な気分になる』ということは、僕の家族や親しい人たちも、この芸能人と同じことをしたら、同じくどこかの誰かを『嫌な気分にさせる』のは、分かるんだ。僕はその事実を学んだ。だから沙奈子や玲緒奈れおなにも、誰かをイジメさせたりはしない。そんなことを許したりしない。


沙奈子や玲緒奈がこの芸能人みたいに多くの人を『嫌な気分』にさせているところなんて、見たくないんだ。



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