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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
1842/2601

千八百四十二 玲緒奈編 「波多野さんの部屋に入り浸り」

七月十三日。火曜日。




例年ならそろそろ『個人懇談』がある時期のはずだけど、今年はそれどころじゃなかった。進学を控えた子がいる家庭だと、すごくヤキモキしたり不安だったりするだろうな。


だけど僕たちは、


『なってしまったものは仕方ない』


と割り切ってる。それに、星谷ひかりたにさんからも、


「市内の公立高校であればどこでも十分に合格できます」


と太鼓判を押されてるから、焦る必要もまったくない。小学校の二年生三年生の時期にほとんど学校に通えなくて丸二年分、勉強が遅れていたはずの沙奈子が、今ではもう高校の範囲まで手を伸ばしてるんだ。星谷さんの予測では、


「今の調子であれば、高校の二年の段階には、一部の難関大学以外であれば問題なく合格できるようになるでしょう」


とのことだった。結人ゆうとくんはまだようやく中学三年レベルまで追いついたところらしいけど、


「このまま努力を続ければ、第一志望に十分合格できるでしょう」


とも言ってくれてる。結人くんの第一志望も、沙奈子や千早ちはやちゃんや大希ひろきくんと同じだった。これといって目標もないから、


「俺も同じところでいい……」


ってことで深く考えることもなく決めたらしいけど、高校までならそういうふわっとした理由でもいいよね。沙奈子たちだって、


「ピカえと同じ学校に行きたい。制服譲り受けられるから」


という千早ちゃんの意見に乗る形で決めただけだから。


特に結人くんの場合は、本人にまったく勉強に対する意欲がないどころか、人生そのものを諦めて、犯罪に走ろうとする人たちを片っ端から曝し上げて、その中でもし殺されるようなことがあっても構わない。くらいの、破滅的な考えでいたらしいから、それを思えば本当に大きな変化なんだろうな。


鷲崎わしざきさんと喜緑きみどりさんのことについても、


「別に……あいつらはあいつらで好きにすればいい」


と、波多野さんには話してるんだって。知らない人が聞いたら不快にも思える言い方かもしれないそれも、彼の『人となり』を知る僕たちからすれば、『ただの照れ隠し』にも聞こえるしね。


それどころか、結人くんなりの気遣いなのかもしれない。


『自分のことは気にしなくていい』


っていう。それもあってか、今ではもう、波多野さんの部屋に入り浸りだそうだから。


と言っても、鷲崎さんも喜緑さんと一緒に過ごす時には喜緑さんの部屋に行くそうだけど。でも、それだと、結人くんが一人で取り残される形になるから、『波多野さんのところに行ってる』っていう体裁が必要なんだろうな。



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