表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
1833/2601

千八百三十三 玲緒奈編 「強く共感してしまいがちな」

七月四日。日曜日。曇り時々雨。




関東の方であった大規模な土石流は、大変な被害になってるみたいだ。


この辺りはおおむね平地だけど、少し歩けば幹線道路が坂になっていたりで、『絶対に安全』とは断言できない場所でもある。


だけど、どこに住めば『絶対に安全』なのかは、分からない。そもそもそんな場所が存在するのかどうかも分からない。だから、心構えを作っておくくらいしかないような気がする。


その上で、災害に備えなくちゃと思うけれど、非常食はともかく、ティッシュやトイレットペーパーは、長く品薄状態が続いたことでストックから使っていく形になって、今はもう数日分くらいしか残っていない。かなり節制してたつもりでも、とにかく『普通には買えない』状態が長かったからね。今も、『買えなくはない』というだけで、完全に以前の通りにも戻ってないし。


そんな中でも、沙奈子と絵里奈は、山下典膳やまもとてんぜんさんのギャラリーに行く。星谷ひかりたにさんに紹介してもらったタクシー会社でタクシーを呼んで、直行するんだ。


『こんな時に不謹慎な!』と言う人もいるかもしれないけど、それを言ったら、世界中でいつでもどこかで大変な思いをしてる人がいるはずだから、そこまで気にしてたら神経がもたないと、僕たちは実地で学んだよ。玲那の事件にしたって、波多野さんのお兄さんの事件にしたって、全員で同じように深刻な顔をしてたんじゃ、たぶん、みんな潰れてたんじゃないかな。玲那も波多野さんもそんなことは望んでなかった。だから、千早ちはやちゃんや大希ひろきくんやイチコさんや田上たのうえさんには、できる限り普通にしてもらってたんだし。


僕たちは、周りの人が僕たちと同じようにしてくれることを強要しないようにしなくちゃと、思ってる。結婚して子供を生んだからって沙奈子や玲那や玲緒奈や千早ちゃんや大希くんや結人くんやイチコさんや波多野さんや田上さんも僕と同じように結婚して子供を生むべきだなんて言わないようにしたい。


それに僕と絵里奈は、結局、結婚式もしてないしね。『普通』ってことを考えたら、僕と絵里奈はもう『普通』じゃないんだ。そんな僕や絵里奈が、『結婚して子供を生むべきだ』なんて言えないよ。


そう考えると、災害があったからって、普段と何も変わらずにいられる沙奈子たちにまで自粛自粛と言うのも違うと思うんだ。


しかも沙奈子は、誰かが辛い思いをしてるとそれに強く共感してしまいがちな部分があると感じてる。だから意図的にあまり気にしないようにしてないと、逆に精神的に参ってしまう傾向にあるんじゃないかな。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ