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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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千八百二十五 玲緒奈編 「彼女が生き生きしてるのが」

六月二十六日。土曜日。曇り。




今日も、沙奈子は水族館に行く。でも、星谷ひかりたにさんの都合がつかなかったから、今回は玲那が一緒に行くことになった。星谷さんが手配してくれたハイヤーで。先週は、星谷さんがいたから玲那は家に残ったっていうのもあるからね。


もう中学三年生だから沙奈子たちだけで行っても大丈夫なのかもしれないけど、でも、今は『新型コロナウイルス感染症』の件もあって、さすがにそこまで気が回らないかもしれないから、そういう部分をフォローするために大人が同行した方がいいと思ったんだ。どうしても何かに熱中してしまうと他が疎かになることもあるからね。少し引いた位置で、全体を見てくれる人が必要な気がする。


「いってきます」


「いってらっしゃい」


僕と玲緒奈れおなと絵里奈に見送られて、沙奈子と玲那は、ハイヤーに乗り込んだ。


その様子を見て、『新型コロナウイルス感染症』の件で皮肉なことがあるのを改めて気付かされた。マスクが当たり前になったことで、玲那も大きなマスクで顔を隠せるようになって、その分、メイクの手間が省けたんだって。マスクしてると化粧とか口紅とかがついてしまったりするしで、あんまりバッチリとメイクする意味がないらしい。そして、目だけだと、世間に知られてる玲那の写真は、すごく目付きの悪いものばかりだから、今の柔らかい表情の玲那とは、メイクをしてなくても似ても似つかないんだ。今まではその上で念のためにバッチリメイクをしてたんだけど、それが必要なくなるというのは、本当に皮肉だよ。


水族館に行ってる間、逐一、玲那からメッセージが届く。それは、僕たちを安心させるためでもある。


『沙奈子ちゃんのデッサン、スゲーッ!』


『超高速沙奈子ちゃん』


『なんか魔法見てるみたい』


沙奈子が『クリサオラ・プロカミア』というクラゲを見ながらデッサンを描き上げてる様子を、玲那が興奮した様子で何度も伝えてくれる。その様子を動画にも撮ってて、確かに魔法みたいにデッサンが出来上がっていく。生き物の存在感そのものが、沙奈子にとってもすごい刺激になっているんだろうな。だからその場で直に見る必要があるんだなって感じる。


そうして『クリサオラ・プロカミア』から着想を得たデザインが描き上がると、今度は『アマクサクラゲ』を見ながらデッサンを。


実はそこまででもう何枚も描き上げてたそうだ。でも実際に、ドレスとして形になるのはその一部。なんかもったいないような気もするけど、沙奈子自身が『これだ』と思ったものを形にするのが大事なんだろうな。


なにより、彼女が生き生きしてるのが本当に嬉しい。


すると、テレビをモニターにして映し出されたクラゲや魚や沙奈子の画像を、玲緒奈も見入ってた。


正直、あまり意味は分かってないのかもしれないけど、関心を示してくれるのはいいのかもしれない。



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