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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
1821/2601

千八百二十一 玲緒奈編 「いつか僕たちの下を」

六月二十二日。火曜日。曇り。




とうとう、玲緒奈れおなに歯が生えてきた。


僕と絵里奈は、玲緒奈を勝手にこんな世の中に送り出してしまったけど、だからこそ僕は、彼女が安心して成長できるような環境を作っていきたい。その中でのびのび育ってくれればそれでいい。


どんな人に育つかは分からないとしても、少なくとも他人に八つ当たりしてストレスを転嫁しなきゃいられないような家庭にはしないよ。


それだけは誓う。


決して、『贅沢な暮らしができる』わけじゃないけど、


『贅沢をすることで自分を癒さないといけない』


なんていう家庭にもしないつもりなんだ。


絵里奈も言う。


「世の中には、『贅沢な暮らしができないと幸せになれない』と言う人もいるみたいですけど、私は別にそうは思いません。『衣食足りて礼節を知る』というのは、『贅沢ができれば』という意味じゃないと思うんです。現に私は、今、幸せです。正直、『贅沢な暮らしができないと幸せになれない』というのは、『贅沢をして自分を慰めていないと耐えられないくらいのストレスに囲まれてる』という意味じゃないんですか?。そうでないと、『贅沢な暮らしができなかった時代には、誰も幸せを感じてなかった』ってことになりますよね?。いくらなんでもそれはおかしいと思うんです。


確かに、贅沢ができれば楽しいかもしれません。だけどすべての人が際限なく贅沢をできるほどこの世は都合よくできてないですよね?。七十億人全員が贅沢な暮らしができるだけの資源は地球にはないとも聞きますし。だったらなおさら、贅沢はできなくても幸せを掴めるってことをわきまえた方がいいと思うんです」


って。僕も、そう思う。僕も、必ずしも贅沢はできないし、『新型コロナウイルス感染症』の影響でいろいろ不便だったり不安もあったりするけど、だからと言って自分が今、不幸なのか?って言われたらそんな実感はないんだ。


何もかもが自分の思い通りにいくわけじゃないのは、最初から分かり切ってる。そんなムシのいい話はこの世にはない。その中でも、僕には、沙奈子がいて、玲緒奈がいて、絵里奈がいて、玲那がいて、段ボールに囲まれた『ウォール・リビング』内で五人で一緒に寝ることになってても、それ自体が何だか楽しい。


沙奈子も言ってくれてる。


「こうしてみんなと一緒にいられればそれでいい」


と。


もちろんそれがいつまでも続くとは限らない。なにより、沙奈子はいつか僕たちの下を巣立っていくだろうからね。でも、少なくとも努力は続けたいと思う。


『努力しない親の姿』を、見せたくないんだ。それと同時に、


『適切じゃない努力をしてるのにその事実を認めずに上手くいかないのを誰かの所為にする親の姿』


も、見せたくないな。



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