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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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千八百二十 玲緒奈編 「頼りない親の下でも」

六月二十一日。月曜日。晴れ。




土曜日に、沙奈子たちを水族館に連れて行ってくれた星谷ひかりたにさんは、見学を終えたと同時に、次の予定があるからと、ハイヤーを見送ってそのまま別れたことについて、正直、『大丈夫なんだろうか?』と心配になってしまう。


だけど、星谷さんは、自分というものを客観的に見ることができる人だし、


「自身の体調管理も仕事のうちです」


と口にするような人だから、たぶん大丈夫なんだろうな。なにより、千早ちはやちゃんと大希ひろきくんが、彼女の異変も見逃さない。女性特有の『体調が優れない時』だって、


「大丈夫?」


って声を掛けたくらいだし。二人が見ててくれるなら、星谷さんは無理をせずにいられるんじゃないかな。


逆に、二人が見守ってくれてないと、いくら自分では無理してないつもりでもついついということもあるのが人間というものだろうし。言うなれば、千早ちゃんと大希くんは、星谷さんにとっての『リミッター』みたいな存在でもある気がする。


僕にとっての沙奈子や絵里奈や玲那ってことかな。彼女たちは、僕のことをよく見てくれてる。よく見て、気遣ってくれてる。だから僕も、沙奈子を絵里奈を玲那をよく見なきゃって思うんだ。そして今は、玲緒奈れおなのことも。


そうやって自分のことを見てもらえてる実感が、気遣ってもらえてる実感が、『他者のことをよく見る』っていう、『他者を気遣う』っていう、他者との関係性を作り上げていく振る舞いが、無意識のうちにできるようになるんじゃないかな。


もちろん、『誰にでも』とはいかなくても、少なくとも自分の身近な人たちに対してはできるようになる気がするんだ。そういう姿を、僕は、玲緒奈に見せていってあげなきゃいけないと思ってる。僕の真似をするだけで他者とそれなりに付き合えるようにね。




ところで、玲緒奈と言えば、また一つ、大きな変化が。


「あれ?。玲緒奈、歯が生えてきてる?」


離乳食のおかゆをあげてる時、あ~んってした彼女の歯茎に白いものが見えて、僕はおもわず声を上げた。


「え?。本当ですか?。あ、ホントだ!。歯が生えてきてる!」


絵里奈が玲緒奈の口を覗いて、テンションが上がる。下の前歯が、一本、生え始めてきてるんだ。道理で、しきりに口を気にするような仕草を見せていたと思った。歯が生え始めてきて、それで違和感があったんだろうな。


「玲緒奈ぁ~、歯が生えてきたね~♡」


僕もまた、目尻が垂れ下がって頬が緩んでしまうのが自分でも分かる。


ああ、すごいな。この子はこうやってちゃんと成長してるんだ。僕みたいな頼りない親の下でも、ちゃんと成長してくれてる。ありがたい。本当にありがたい。



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