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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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千八百十五 玲緒奈編 「あのスラックスは」

六月十六日。水曜日。雨。




「俺がお前の姉ちゃんのズボン穿けってんなら、お前は田上たのうえさんのスカート穿けよ」


千早ちはやちゃんや沙奈子が、星谷ひかりたにさんや波多野さんやイチコさんや田上さんが通ってた学校に行くことになればそれぞれの制服を譲り受ければいいという話になって、そこで大希ひろきくんが冗談で、結人ゆうとくんに、


『じゃあ、結人はお姉ちゃんのスラックス穿いたら?』


と言ったのを受けて、結人くんも、そう返してきた。サイズ的には田上さんのが一番合いそうだから。


実は、それも校則上、できないことじゃなかった。女子もスラックスでいいのと同じで、男子も別にスカートでもいいって。ただし、トイレは原則、男子のを使うことになるけど。でも、『どうしても』ということなら、職員室横の教師用の女子トイレでという例外措置もあるらしい。単にこれまでスカートを選択する男子はいなかったってだけで。対して、スラックスを選択する女子は、だいたい毎年のように一人くらいはいるらしい。


ただ、大希くんは別にトランスジェンダーというわけじゃないから、


「いや~、それは勘弁かな」


ということだった。元々、大希くんは、女の子に間違われることがこれまでにも多くて、だけど彼自身はそう見られることは好きじゃなくて、男子としての格好は貫いてきた。それでも、


『ボーイッシュな女の子』


にも見られるらしい。


ちなみに、イチコさんも、トランスジェンダーということじゃないけど中学高校とスラックスを貫いて、トイレは女子トイレを使ってて、別に騒がれたことはなかったそうだ。スラックスを穿いてても同時に胸もあるしやっぱりちゃんと女子に見えるから、堂々としてれば、最初はちょっとギョッとされることもあったらしいけど、周りもすぐに慣れたって。


「私は別に男になりたいわけじゃなくて、単にスカートが嫌いってだけだったからさ。中学ん時も高校ん時も、『うらやましい』って言うコはいたよね。ホントはスラックスにしたいんだけど、同調圧力に負けてってコも結構いるみたいだよ。私はそういうの気にならないタイプだったからさ」


そして、そんなイチコさんに倣って途中からスラックスに変えたのが、波多野さんだった。ただ、そのきっかけが、お兄さんが事件を起こして家庭が崩壊して、山仁やまひとさんの家に居候するようになって、学費以外の生活のすべてを山仁さんに面倒見てもらって、その中でスラックスをプレゼントしてもらえたからっていうのが、すごく皮肉だけど。それもあって、


「私にとってあのスラックスは、宝物なんだ。でも、もし、誰か引き継いでくれるっていうんなら、譲ってもいい」


とは言ってたのだった。



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