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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
1814/2601

千八百十四 玲緒奈編 「ぶん殴るぞ、お前」

六月十五日。火曜日。曇りのち雨。




『先を急ぐ必要もないと思うんです』


高校には通わずアルバイトでもいいから仕事をしてケーキ屋を始める資金を貯めたいと言っていた千早ちゃんに、星谷ひかりたにさんはそう告げてくれて、彼女は、まずは高校までは一緒に通うことにしたって。


だけど同時に、『なるべく甘えたくない』という気持ちもやっぱりあって、少しでもお金を節約するために、星谷さんや波多野さんの制服がそのまま使える学校がいいということになって。すると沙奈子も、


「じゃあ、私も千早と同じ学校でいい」


だって。さらに大希ひろきくんも、


「だったら僕もそれでいいや」


ということに。


具体的に道筋がはっきりしていて、そこを目指すために必要な勉強ができる学校に通うというのでなければ、別に『友達がそこに行くから』という理由で学校を選ぶのも、ありだと僕も思う。僕自身、さっさと大学を出て就職して両親の下を離れたいというだけの理由で手近なところに進学したからね。沙奈子の選択に口出しできる立場じゃないよ。


それに、僕自身、本当に『人生』を生きられるようになった実感があるのは、沙奈子が来てからだ。それ以前の僕は、ただ死んでないだけだった。『生きてる』なんてとても言えなかった。


仕事だって、別にそれがしたかったわけじゃない。それが一番やりやすかっただけだ。僕にとっては。つまり、『楽ができるから』というだけ。そんな僕が沙奈子に何を押し付けられるって言うの?。


僕は沙奈子に生かしてもらったんだよ。あの子がいたから、僕は今の僕になれた。たとえ何かすごいことがなくても、ただ友達と一緒に高校生活を送りたいだけでも、それも十分に理由になると思う。


「だったら、私達も制服、提供するよ」


「うん。嫌じゃなかったらだけど」


イチコさんと田上たのうえさんもそう言ってくれた。


残念ながらそれだと女子の制服しか用意できないから、大希くんと結人ゆうとくんのは別に用意しないといけないけど、


「じゃあ、結人はお姉ちゃんのスラックス穿いたら?」


大希くんは冗談めかして結人くんに言ってた。


「……ぶん殴るぞ、お前……」


結人くんはそう言いながらも、目は怒っていなかった。


姉弟なんだから大希くんがイチコさんのスラックスをとも思ったけど、イチコさんと大希くんじゃさすがに体格が違いすぎて、無理があるそうだ。イチコさんは、高校入学時で身長が百六十近くあったけど、大希くんは今、やっと百四十を越えたところで。


それに対して、結人くんは、今の調子で成長すると、ちょうど、中学卒業頃にイチコさんと同じくらいの身長になりそうだって。



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