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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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千八百十三 玲緒奈編 「貸与型の奨学金」

六月十四日。月曜日。晴れ。




今日から水族館が再開される。


沙奈子の学校も、部活とかについてはまだ制限もあるものの、おおむね、元の状態に戻りつつある。


ただ、今月に予定されていた『進路説明会』については、結局、中止になるそうだ。沙奈子と千早ちはやちゃんと大希ひろきくんについては、星谷ひかりたにさんから、


「市内の公立高校であれば、どこにでも問題なく合格できるでしょう」


とお墨付きをもらってるから、三人はそれこそ好きなところに通えると思う。そこで、千早ちゃんは、


「ピカえが行ってた学校に行きたい」


って。


「ほら、それなら、ピカえやカナえの制服がそのまま着られるじゃん?。サイズはカナえのが合いそうだけどさ」


とのことだった。それは、『制服にかけるお金だけでも節約したい』という気持ちからだった。


『そんな理由で学校を選ぶなんて』って言う人もいるかもしれないけど、そもそも彼女は、


「お姉ちゃんも高校行ってないし、私も別にいいかなって思うんだ」


と最初は言ってたらしい。千早ちゃんが高校に通うための費用は星谷さんが出してくれることになってるそうだけど、千早ちゃん自身はそれが申し訳なくて、高校には行かないで、まず働いてケーキ屋を始める資金を自分の手で貯めるつもりだったって。だけどそれに対して星谷さんが、


「千早は、沙奈子さんと一緒にいたくないのですか?」


そう問い掛けると、


「それは……、一緒にいたいけど……。でも、沙奈やヒロとはいつでも会えるし、私、少しでも早くケーキ屋を始めたいんだ!」


と応えたそうだ。なるほど、千早ちゃんの選択も、アリな気はする。彼女には明確な目標があるんだから、それに向かって一直線に、というのも立派な選択肢なんじゃないかな。けれど、星谷さんは、


「私は決して、学歴が大事だとは言いません。ですが、私が自身の在り方について考えられるようになったきっかけは、イチコたちと同じ高校に通っていたからでした。それがなければ、私はきっと、今の私にはなれていなかったでしょう。


確かに千早は私よりもずっと早く、自身の問題に気付くことができて、それを改めることもできました。これ以上の出逢いは必要ないのかもしれない。ただ、だからといって先を急ぐ必要もないと思うんです。もし、千早の学費を私が出すことに負い目を感じているのなら、あくまで『貸与型の奨学金』と考えてはいかがでしょうか?。社会人となって仕事を始めてから、少しずつ返済してもらえればいい。利息はいただきませんが、それならば心理的な負担も軽く済むのではないですか?」


とも言ってくれたんだって。



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