千八百八 玲緒奈編 「お前の言うことなんか」
六月九日。水曜日。晴れ。
今日はまた、沙奈子は午前中だけの授業だ。
給食はあるけど。
学校が終わると、沙奈子と千早ちゃんと大希くんと結人くんが揃って家に帰ってくる。そして夕方まで、うちの三階で過ごす。
この過ごし方は、山仁さんの家に集まっていた時からずっと続けてることだから、むしろ沙奈子たちにとっては当たり前のものなんだ。
そして、みんなで集まって勉強をした後で、自由な時間を過ごすのも。
沙奈子は基本的にドレス作りだけど、千早ちゃんと大希くんと結人くんは、ずっとゲームをしてるか動画を見てるかアニメを見てるかだった。玲那が録画してる深夜アニメとかも見放題だ。
だけど僕は、ゲームやアニメの影響というのは何も心配してなかった。ゲームやアニメの中で何をしてたって、沙奈子たちにとっては『どうせ作り物だから』という認識しかないから、真似をしたりすることもない。
アニメで自転車の二人乗りとかしてても、沙奈子も千早ちゃんも大希くんも結人くんも、真似をしない。それがよくないことだって知ってるし、大人に反発してわざとよくないことをする必要もないから。
これについて、千早ちゃんがビデオ通話越しに言ってた。
「アニメを見て真似するとか言ってる人いるけど、いや、私はアニメで見たから沙奈に意地悪してたわけじゃなからね?。気に入らない相手にはそんな風にするもんだってのは、お母さんやお姉ちゃんがそうしてたからそれが普通だって思ってただけだから。アニメが作り物だってことくらい、私だって分かってるよ。それを真似すると考えるとか、子供ナメすぎ。でもさ、アニメでやってたことを大人がやってたら、まあ、やっていいんだって思うよね。アニメの中だけでやってたら別に真似とかしないけどさ。どうせ作り物だし。てか、アニメでやってることを真似するとか、そんなの小学生低学年までじゃん?」
って。その上で、
「それにさ、アニメでやってて真似しちゃダメなことを子供がやってたら、普通の親は叱るもんじゃないの?。それを叱らない親とか、おかしいじゃん。てか、子供のこと見てなくて何やってるかも分かってない親もいるかもだけど、いやいや、それがおかしいよね。子供がよくないことをしてても気付かないとか叱らないとかさ。まあでも、私のお母さんなんかは怒鳴り付けたりぶん殴ってきたりするけどさ、でも、そっちはそっちで、ムカつくから意地になってやるんだよ。『お前の言うことなんか聞いてやるか!』って思ってた」
とも言ってたんだ。




