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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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千八百七 玲緒奈編 「自分でそうしたいと思うから」

六月八日。火曜日。晴れ。




今日は、出席番号が偶数の生徒が午前だから、出席番号が奇数の沙奈子は午後から登校することになる。


先週に引き続いて変則的なそれだけど、沙奈子は特に気にしてる様子もなかった。彼女はちゃんと、今の世の中が普通じゃないことを理解してくれてる。その上で、『こういうこともある』と僕は理解してもらおうと思ってる。


そのためには、僕自身が、今のこの状況にオロオロするんじゃなくて、淡々と毎日を過ごすことを心掛けるべきだと思うんだ。


僕一人が焦ったって騒いだってこの問題は解決しない。


先日、千早ちはやちゃんと大希ひろきくんと星谷ひかりたにさんが久々に行ったあの旅館も、苦しいながらいろいろ工夫して何とか今を乗り切ろうとしてるそうだ。


みんな頑張ってる。その中で僕たちはむしろ恵まれてると思う。普通に在宅仕事に違和感なく移行できて、『SANA』の売り上げは何とか横這いで済んでて、身近な誰も、感染もしていない。


そういう意味では、『なんだ、大したことないじゃないか』と思ってしまいがちなんだろうけど、それはたまたま僕たちの運がいいだけなんだろうな。


思えば、沙奈子も玲那も千早ちゃんも結人くんも波多野さんも、普通は一生のうちで一度も経験しないようなひどい経験をしてきてるんだ。イチコさんだって大希くんだって、『元死刑囚の孫』なんて、『なにもそんなひどい境遇に生まれつかなくたって』という大変なものを背負って生まれてきてる。


みんな、とんでもなく『運が悪い』とも言えるんじゃないかな。だからこそその中でちょっとくらい運が良くたって、とても帳消しになるようなものじゃない気もする。


それと同時に、わざわざ自分から不幸になりにいく必要もないよね。


と、その時、「ピンポーン」とインターホンが鳴った。千早ちゃんと大希くんと結人くんだった。学校は午後からだけど、いつもどおりみんなで集まりたかったみたいだ。


そして三階で、ビデオ通信で星谷さんに見てもらいながら勉強をする。すっかり当たり前の習慣になった過ごし方。


お昼は、それぞれお弁当を持ってきてるって。うちで用意して食べてくれてもよかったんだけどね。千早ちゃんは山仁やまひとさんの家で、大希くんと一緒に自分達のお弁当を作って、結人くんのは鷲崎わしざきさんが作ってくれて。


それぞれ、楽しみながらやってるからできることだと思う。誰かに強要されたり強制されたりじゃなくて、自分でそうしたいと思うから、なんだろうな。


沙奈子も、一階のキッチンでささっと自分で作ってお昼にしてた。



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