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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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千八百三 玲緒奈編 「アドバイスできることなんて」

六月四日。金曜日。雨。




今日はまた、沙奈子たちは自宅学習で、三階に集まってる。昨日、学校から帰ってきた時の様子も見たけど、普段と変わりなかった。


僕は、自分の子供の感情とちゃんと向き合う覚悟を持って、沙奈子と、玲那と、玲緒奈れおなと向き合うことを心掛けてる。『面倒臭い』とか『時間がない』とか言って自分を甘やかさないようにしたいと思ってる。そういうところが、玲那に言わせると『強い』らしい。


だけど自分では、『強い』という実感はないかな。僕はただ、自分が沙奈子や玲那や玲緒奈の親になろうと自分で決めたことについて責任を持ちたいと思ってるだけなんだ。それができない親の姿を見せたくないだけなんだ。子供に厳しいことを言うのが『強さ』だなんて、まったく実感も持てないことを盲目的に信じたくないだけなんだ。


『他人に厳しい人は、自分に甘い』


今の世の中を見るからこそ、痛感する。他人に厳しいことを言ってる人は、自分が都合悪くなると言い訳を並べて逃げる。


事件を起こしたら『自分は悪くない』と言って逃げる。


事故を起こしたら『自分は悪くない』と言って逃げる。


そういう大人の姿をニュースで見ない日はない。しかも、『厳しい躾』を受けたはずの世代がそういうことをしてる。そういう人たちは、自分を批判されるとキレる。他人の意見に耳を傾けない。


だから僕は、面と向かって責めないし批判もしないようにしてる。言っても無駄だから。


その分、自分に言い書かせるんだ。


『沙奈子の玲那の玲緒奈の親になることを決めたのは、他でもない僕自身だ』


って。その僕の選択が原因で降りかかってきたことから逃げないようにしなくちゃって。沙奈子や玲那や玲緒奈と向き合うことから逃げないって。


沙奈子はここまで、僕に対して強い感情を向けることはなかった。でも、これから先もそういうことがないとは限らない。


ううん。むしろ、抑えきれないような強い感情が沸き上がった時には、僕にこそぶつけてほしい。玲那がやってるみたいにね。


沙奈子はまだ、子供としての限られた世界の中にいて、その中でならある程度自分で感情を制御できてるみたいだ。彼女は我慢強い。でも、我慢強いからこそ、その彼女が感情を抑えきれなくなるような事態というのは、かなり大変な状況なんだろうなって予感がある。


その時に、逃げたくないんだ。


『沙奈子の親になるんだって自分で決断したという現実』からね。


僕がその現実から逃げるようじゃ、沙奈子に対して親としてアドバイスできることなんてないと思うんだ。



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