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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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千八百 玲緒奈編 「自分の足で立つのは」

六月一日。火曜日。




今日から、沙奈子の学校が段階的に再開される。出席番号が奇数のグループと偶数のグループに分けて、交互に登校するという形で。


沙奈子も千早ちはやちゃんも大希ひろきくんも結人ゆうとくんも、たまたま出席番号がみんな奇数で、今日、午前中だけ授業がある。給食はない。


あと、クラスは、沙奈子と千早ちゃんが三組。大希くんと結人くんが七組という形で分かれた。全員がバラバラにならなかったのは幸いだけど、さすがにみんな同じクラスなんて都合よくはいかないか。


それに、進級してからほとんど学校に行っていなかったからね。


「いってきます」


久々の制服を身にまとって、リュックを背負って、一階に降りる階段のところに立った沙奈子に、『ウォール・リビングの壁』越しにやっぱり久々の『いってらっしゃいのキス』をする。絵里奈と一緒に。そして絵里奈に抱かれた玲緒奈が、


「うーぱ! ぷぽ?」


と声を上げながら沙奈子に向けて手を伸ばした。その玲緒奈の額に、沙奈子が、『いってきますのキス』をする。それから、僕と絵里奈にも、『いってきますのキス』をしてくれる。久々だけど、ぜんぜん、ぎこちなさはなかった。『本当はやめたい』と思ってたらやめてくれても良かったんだけど、まったくそんな気配もない。


それが、『沙奈子に認めてもらえてる実感』になってるんだ。


もちろん、成長と共に気恥ずかしくなってきて『やめたい』って思うようになっても、それは受け入れる。無理強いするつもりはないんだ。きっと、少し寂しい気はしてしまうと思うけど、それも『成長』や『自立心の芽生え』だと考えたら納得できる。何もかもを親である僕に従わせる必要もないよ。


同時に、『自立を強要する』こともしない。そんなことをしなくても、沙奈子はもう自分で考えて自分で決めて自分で行動することができてきてる。その一方でまだ甘えたい気持ちが残ってるだけだ。それが残ってるうちは応える。満足するまで甘えられなかったら、それをいつまでも引きずることになると思うから。


イチコさんも、中学三年まで山仁やまひとさんの膝に座ったり、一緒にお風呂に入ってたそうだ。だけど、高校進学を機に、しなくなった。無理にやめたんじゃなく、


「もういいかなって自分で思えたんだ」


ってイチコさん自身が言ってた。『自立』というのは、そういうことなんだと感じる。親の側からそれを強要されるんじゃなくて、自分の意思で自分で決めるからこそ『自立』なんだと感じるんだ。


『甘やかすな』という言葉を使う人ほど実は本人が甘えてる。


僕は沙奈子に、


『大丈夫だよ。自分の足で立つのは怖いことじゃない』


と実感してもらうだけなんだ。



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