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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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千七百八十九 玲緒奈編 「構ってほしいなら僕に」

五月二十一日。金曜日。雨。




千早ちはやちゃんや玲那に我慢を強いている今の状況を、僕も辛いと思う。


でも、僕たちは、自分の力だけじゃどうにもならないことがこの世にはあるし、辛い時期っていうのも付き物だっていうのも思い知らされてきた。今がまさにそれなんだと思う。


この世は、なんでも自分の思い通りになるわけじゃない。むしろ、思い通りになることなんて、ほんの一握りあれば多い方だと実感してる。


自分の力ではどうにもならないものに苛々しても問題は解決しないし、苛々することでむしろ問題は増えるんじゃないかな。ストレスが溜まって健康にも影響が出るかもしれないし、そのストレスを解消しようとして他人に八つ当たりするようなことをしたら、それこそ『害』になる。僕は嫌なんだ。そういうのは。


だとしたら、自分の力ではどうにもならないものに苛々するんじゃなくて、自分の力で何とかなることについて努力したい。そういう努力をしている大人の姿を、沙奈子や玲緒奈れおなや千早ちゃんや結人ゆうとくんに示していきたい。それを真似するだけで、自分で自分の幸せを壊してしまうような振る舞いをせずに済むようにしたいんだ。


もちろん、自分がいくら努力したって悪意を持った誰かが不幸をもたらすことはあると思う。でも、だからって、それを理由にして、『他人の所為』にして、自分も他人を害そうとするのを正当化したくないんだ。沙奈子や玲緒奈や千早ちゃんや大希ひろきくんや結人くんにそうなってほしくない。そのために努力したい。


今日も玲緒奈は、僕の仕事の邪魔をしてくれてる。僕が「やめて~」って言ったら「ぷぷぷぷぷ」って笑うんだ。だけど僕はそれを叱らない。今の時点でそれを叱っても、玲緒奈には『叱られる理由』が理解できないと思う。それどころか、他人を怒鳴ったり高圧的に振る舞うことを『当たり前』だと学び取ってしまう可能性の方がずっと高いと思う。


玲緒奈は、僕という人間を試してるんだと、思うことにしてる。叱られる理由は分からないとしても、穏当に『やめて』と伝えることを繰り返して、言葉が理解できるようになった時にそれが腑に落ちるようにしたい。


焦る必要はない。急ぐ必要もない。今の時点で困らされてるのは僕だけだ。僕だけが困らされている間に、じっくりと対応していけばいい。構ってほしいなら僕に言えばいいっていうのを、他人に迷惑を掛ける必要はないっていうのを、分かっていってもらいたいんだ。


玲緒奈に承諾ももらわずに勝手にこの世に送り出したのは僕なんだから。



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