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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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千七百八十四 玲緒奈編 「なんて薄情な!」

五月十六日。日曜日。雨のち曇り。




世の中には、たとえこじつけてでも他人との優劣に拘る人が本当に多い気がする。結婚したとかしないとか、子供がいるとかいないとか。どんな会社に勤めてるとか、どんな学校に通ってたとか。


そういう人は、難関国立大学の法学部に通う星谷ひかりたにさんのことさえ、きっと、何かこじつけて貶めて貶そうとするんだろうな。


僕の両親も、そういうことをすごく気にしてる人だった。余所の人がどんな仕事してるかとか、いくら給料をもらってるかとか、そんなことばかり気にして、自分が勝ってると思えばほくそえんで、負けてると思えばどこか劣ってるところはないかと探してた。


僕はそんな両親の姿を『あさましい』と感じて毛嫌いしてたけど、兄はそのまま受け継いでしまってた。だからか、自意識が過剰で、自分がこの世で一番優れてると思い込んでた。


だけど、実際には、兄にはそんな特別な才能みたいなものは、すぐ近くで見ていてもまったく感じられなかった。無暗に前向きで細かいことを考えないその無神経さはある意味では<才能>だったのかもしれないけど、だからって上手くいくはずもない。そうして上手くいかなかったら、


『俺の才能を理解しない奴らが悪い!』


みたいに言って、自分以外の誰かの所為にしてた。そして、反省もしない。自分に原因があるんだとは、考えない。


あげく、たくさんの人に迷惑を掛けて、自分の実の娘さえ捨てて、行方をくらました。今、どこで何をしてるのかも知らないけど、別にもうどうでもいい。彼の身を案じる気になれるほど僕は聖人じゃない。そしてそれは沙奈子も同じ。彼女はもう、実の父親の存在なんてなかったことにしてる節もある。でも僕は、それを責める気にもなれない。


『どんな親でも親には違いない。それを敬えないなんて、なんて薄情な!』


みたいに言う人もいるかもしれないけど、そんなことを言う人は、『他人を敬う』ってことをしてるの?。敬えない相手や敬う価値のない相手まで敬うことができてるの?。『どんな親でも親には違いない。それを敬えないなんて、なんて薄情な!』とか言うこと自体、相手を敬っていないよね?。


だから僕は、沙奈子が実の父親の存在をなかったことにしていたとしても、責めるつもりはないんだ。ただ同時に、実の娘にそんな風に思われるような人間でしかいられなかった兄のことを憐れに感じるけどね。


もしかするとこれも、『兄を見下してる』ということになるのかもしれない。そう言われたらそうなのかもしれない。でも、少なくとも沙奈子や玲緒奈れおなの前で彼を貶そうとは思わないんだ。



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