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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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千七百八十一 玲緒奈編 「自らを省みる勇気を」

五月十三日。木曜日。曇りのち晴れ。




沙奈子は十五歳になって、玲緒奈れおなもすごく順調に大きくなってる。


そして、沙奈子と玲緒奈は、僕にいろんなことを教えてくれてるんだ。僕の両親が何を失敗したのかも、分かってしまった。


あの人たちは結局、僕や兄のことを『人間』だと思っていなかったんだ。人間として僕や兄を育ててこなかった。自分にとって都合のいい『ペット』『人形』『自己実現のための道具』としか思っていなかった。だから失敗した。人間として育てることに失敗したんだ。


それが結局、人間としてはとても歪な、異様な存在を作ることになってしまった。


あの人たちは、『他者を敬う』ということができない人だった。あの人たちにとって『他者』は、『自分にとって利益をもたらしてくれるもの』か、『そうじゃないか』でしかなかった。この世というもの自体が、あの人たちにとっては都合のいいものでないと駄目だったんだ。自分にとって都合よく物事が動いてくれることを前提にすべてを考えてた。だけど当然、そんなことは有り得ない。自分にとってだけ都合のいいことしか起こらないなんて、有り得ないんだよ。


なのに、上手くいくことばかりを想定してるから、当然、上手くいかないし、上手くいかない理由も分からない。上手くいくことだけを望んで、上手くいかなかったらそれは全部、自分以外の誰かの所為、社会の所為、ってことにしてた。自分のやり方が適切じゃないのにそれを認めずに、『自分以外の誰かが悪い』って考えてるのを、兄は受け継いでしまった。


正直、僕も、そういう面があった。自分は真面目にやってるのにそれが上手くいかなかったら、誰かの所為だと内心では思ってた。面倒なことになるのが嫌で口には出さなかっただけで。


でも、そうじゃないんだ。上手くいかないのは、自分のやり方がマズいから。適切じゃないから。そこで自分自身を省みずに、自分以外の誰かや何かの所為にしてるばかりじゃ、上手くいくわけがないよ。


沙奈子も玲緒奈も、それを教えてくれたんだ。


星谷ひかりたにさんのご両親がそうだったみたいに、真面目でも誠実でも、いつでも正しいやり方ができるわけじゃない。人間は失敗する。間違う。真面目な人でも、誠実な人でも。その事実と向き合わなくちゃ、自分自身を省みるということができなくちゃ、問題の原因には気付けない。


『親は絶対に正しい』


『親は間違えない』


『子供は親の言うことさえ聞いていればそれで上手くいく』


『上手くいかないのは子供が親の言うことを聞かないからだ』


そんな風に考えて親自身が自らを省みる勇気を持たないから、問題の本当の原因に気付けないんだ。



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