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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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千七百八十 玲緒奈編 「おめでと~♡」

五月十二日。水曜日。曇りのち雨。



今日は沙奈子の誕生日。


だから、千早ちはやちゃんが昨日、夕食が終わってからまた大希ひろきくんと一緒にやってきて、


「ケーキを作るぜい!」


とすごく気合が入ってた。


沙奈子も手伝おうとしたんだけど、


「沙奈のバースデイケーキなのに沙奈が手伝っちゃ意味ねーじゃん!」


ってことで、手伝うのは大希くんだけになった。そうして三時間ほどかけてケーキを作ってくれて。でも、


「お楽しみは明日まで取っとく!」


そう言って、実際のケーキについては見せてもらえなかった。もちろん、うちの一階の厨房の冷蔵庫に保管されてるから見ようと思えば見られるんだけど、千早ちゃんの力作だからね。楽しみに取っておいたんだ。二階のリビング脇のミニキッチンにも小さい冷蔵庫は置いてあって、そこにも飲み物とかは保管してあるから、一晩くらい一階の冷蔵庫が使えなくても困らないし。


そして今日、沙奈子、千早ちゃん、大希くん、結人ゆうとくんが三階に集まって、僕と絵里奈と玲緒奈れおなは二階のリビングで、ビデオ通話越しに、しかも一階でも、玲那が『SANA』の仕事の休憩中に二階に来て、


「沙奈~♡ 十五歳の誕生日、おめでと~♡」


千早ちゃんの音頭で、


「おめでとう!」


ってみんなで声を揃えて、沙奈子の誕生日を祝った。


本当は、もう、二階のリビングにみんなで集まってもよかったんだけど、千早ちゃんが遠慮して、ね。


だけど僕たちはずっとこうしてビデオ通話で集まることを続けてたから、何の違和感もなくそれができた。


「ありがとう……!」


すごく可愛く作られた千早ちゃんのケーキを前にして、沙奈子もすごく嬉しそうに笑顔だった。


そうだ。沙奈子ももう『十五歳』なんだ。十歳の時に僕のところに来て、それから丸五年。五年だよ。本当にいろんなことがあったけど、今も『新型コロナウイルス感染症』っていう災害の真っ只中だけど、それでもここまでやってきた。やってこれた。あのあどけなかった沙奈子が、すっかり『中学生』が板についてる。成長してる。


すごいな。本当にすごい。僕に沙奈子を育てるなんてことができるのか不安しかなかったのが、嘘のようだ。と言うか、僕はただ、沙奈子を見守ってるだけだよね。沙奈子にとって信頼のできる大人でいようとしてるだけだ。その中で、彼女は、自分の力で成長してくれてる。『育てる』なんておこがましい。彼女が自分の力で成長できる環境を、僕は守ろうとしてるだけなんだ。


沙奈子の穏やかな表情が、この家に、彼女が安らげる場所を僕や絵里奈が作り出せていることを伝えてくれてる。


『親』ってそれでいいと実感する。『育ててやってる』んじゃない。『養ってやってる』んじゃない。ただ一緒に、力を合わせて暮らしているだけなんだ。


みんなで幸せになるために。



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