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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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千七百七十五 玲緒奈編 「立場的に自分の方が強い」

五月七日。金曜日。雨のち曇り。




月曜日から学校が再開される予定だったけど、HPには、


『現在の状況を踏まえ、臨時休校を十日間延長します』


の文字。


確かに状況を見ているだけでも、無理もないかなって印象はある。そして、休校中の課題を、先生たちがポストに投函してくれるそうだ。大変だなと思うのと同時に、感謝の気持ちもある。感謝の気持ちを持てるのは、それだけ普段から丁寧な対応をしてくれてるのが分かるからだね。


沙奈子や結人ゆうとくんに対しても、すごく気遣ってくれてるのが分かるんだ。かと言って、『腫れ物に触る』みたいな接し方でもない。沙奈子や結人くんが、『厳しい指導が必要な振る舞い』をしないからされないだけで、他の生徒とそんなに違った扱いをするわけでもないんだよ。


でも、それほどの学校でも、千早ちはやちゃんは言ってた。


「一年からずっと不登校の生徒がいるんだって」


と。


その子は、入学から一度も登校したことがないって。だから、中学に上がってからの問題じゃなくて、小学校に通ってた頃からの問題なんだろうな。田上たのうえさんが、そのヒントになりそうなことを言ってた。


「私が通ってた小学校とはまた別の小学校なんだけど、卒業生から『修羅校』って呼ばれてる小学校があるんだって。高校とかでいろんな小学校出身者がいるから、それで他の小学校の話を聞くと自分たちの出身校のヤバさを知るみたい。通ってる時はそれが普通だと思ってたらしいし。結構、荒れてる学校みたいだね」


沙奈子が通ってた小学校と同じ市内の公立の小学校でも、そういうのがあるのか。同じ市内のだから、当然、同じ教育委員会の管轄なのにな。


それを思うと、学校を管理する立場の人によって大きく変わってくるっていうのもやっぱりあるんだろうなって思ってしまう。


だけど、その上で、


「でもさ、他の県とかから引っ越してきて同じ高校に通ってた子の中には、『うちの小学校はそんなもんじゃなかったよ』みたいに言う子もいてさ。結局、比較論ってことにはなるんだろうけど、『修羅校』って呼ばれるくらい市内では荒れてる部類に入っても、余所はもっとひどいところもあるってことなんだろうね」


とも。


確かに。結人くんがかつて通ってた小学校では、生徒同士の喧嘩どころか、生徒が教師に暴力を振るったりってこともあったらしいし。加えて、教師が生徒に暴力を振るうってことも。


つくづく、『自分より弱い相手を暴力的に従えようとする』大人の姿を子供が真似てるだけなんだなって思う。だからこそ、生徒の方が、『自分たちは法律で守られてる』ってことを盾にして、『立場的に自分の方が強い』って思えば、『立場的に弱い』教師を暴力で従えようとするんだろうなって実感がある。


粗暴で暴力に頼る傾向のある結人くんが、今、それをしないのは、『自分よりも弱い相手を暴力で従えようとする大人がすぐ身近にいないから』っていうのもあるんじゃないかな。

 


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