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僕に突然扶養家族ができた訳  作者: 太凡洋人
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千七百七十三 玲緒奈編 「何か辛いことはない?」

五月五日。水曜日。雨。




ゴールデンウイーク最終日。子供の日。と言っても、あまり特別なことはしない。


母の日も、父の日も、勤労感謝の日も、そんなに特別なことはしないんだ。四月十八日は結人ゆうとくんの誕生日で、四月二十六日は鷲崎わしざきさんの誕生日だったけど、どっちも、


「おめでとう」


と声を掛けただけだったな。千早ちはやちゃんはしっかりとケーキを焼いてくれたけど。まあそれは千早ちゃん自身の楽しみでもあったし。その上で、二人の誕生日については、喜緑きみどりさんとでちゃんと祝ったそうだから。


なんだか、毎日、相手を労わってるとね、『特別な扱い』をする必要を感じなくなってくるんだ。


僕はいつだって、沙奈子にも絵里奈にも玲那にも感謝してる。千早ちゃんにも大希ひろきくんにも結人くんにも、星谷ひかりたにさんにも鷲崎さんにも山仁やまひとさんにもイチコさんにも波多野さんにも田上たのうえさんにも、感謝してるんだ。僕たち家族が幸せでいられてるのは、みんなのおかげだって。


そして、玲緒奈れおなに対しても。


こんな辛いことがたくさんある世界に僕たちの勝手で送り出してしまって、それなのにこんなに笑顔を向けてくれる。それだけで感謝しかない。


もちろん、世の中は『新型コロナウイルス』の件で大変なことになってるし、僕たちの周りでもいろいろと影響は出てきてる。『SANA』の売り上げはやや上昇傾向だけど、僕が勤める会社では、今年に入ってからの売り上げが、去年に比べて一割減だって。主にイベント関係のデザインについてキャンセルが相次いだらしい。逆に、家庭内で使う商品関係の仕事は増えたから、トータルでは一割減で済んだけど、それがなかったら三割ぐらい減っていた可能性もあるって。


給料には今の時点ではそのままだけど、賞与は確実に下がるって話だった。賞与については元々当てにしてないからなんとかなるとしても、正直、不安はある。鷲崎さんの方は、逆に仕事が増えたけど、会社としての売り上げが落ちたから、賞与は厳しいらしい。


そんな風に、自分たちじゃどうしようもないことで大変だったりするのが、この世というものだ。


だからそれを嘆いても何も解決しない。与えられた状況の中でいかに幸せを作り上げていくかが求められてるんだって改めて思う。


だったら、派手に遊ぶんじゃなくて、みんなでお互いの笑顔を見ていられるように、お互いを労わってたらいいんじゃないかな。


今までのことを思えば、こうして家族が一緒にいられるだけでも幸せだよ。


「沙奈子、何か辛いことはない?」


そう尋ねても、彼女は、首をかしげて、


「別に……、ないかな……。水族館に行けないのは残念だけど……」


だって。



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